それからゲームをしながら話をしようと思ったんだけど。
「うぎゃあー!!」
「……はあ」
まあできる状態じゃないよね。うん。でも、話すけど。
「一応今日の夜中にまた話をしたいんで、起きておいてくださいね」
「いやー!!」
「オレは聞いたんですけど、アオイから詳しく話をしてもらおうかと」
「やめてやめてやめてー!!」
「理事長も知らないと思います。あの家のこと」
「うひょ~!!」
「明日、早速ですがあいつの母親の方に会いに行こうと思います。マサキさんアッシーにして、レンタカーでも運転させます」
「どっしぇ~!!」
「目星はついたんで、すぐに見つかるかと思います。……ちゃんと、話してくるんで」
「あちょ~!!」
「行ってきます。見つけてきます、あいつの名前」
「いやっほ~!!」
オレはゴールしてしまったので、コントローラーを置いて立ち上がる。
「人の話聞けやコラ」
「痛い……。痛いよ日向くん……」
理事長を足蹴にする。一回ぐらい返事をするかと思えば、変な叫び声ばっかり。
「ちゃんと聞いてんのわかってるんですから、返事ぐらいしたらどうなんですか。大人でしょ」
「はい。ずみまぜん」
蛙のように潰した理事長の背中を、ぐりぐりとかかとで穴を掘るように攻撃する。
「ああ……。も、もうちょっと右……」
「しねえ」
マッサージなんか誰がするか! 頭を一度叩いてから、オレは扉の方へと進む。
「ちゃんと話せるまで帰って来ないんで。情報、必ず掴んで帰ってきます。帰ってきたらもう一度、最後の戦略を立てます。もうこれで最後です」
「……そうか」
やっとまともな返事が返ってきた。
「なので、楽しみにしててください。全部まとめて、丸ごと解決してやります」
オレはしたり顔で笑ったあと、理事長室を出ていった。
「……全部まとめて、か」
残ったぼくは、ゲーム機を片付けながらそうぼそり呟く。
「日向くん。どうして君は……」
……そこに、『自分』だけは入れていないんだろうか。



