「……うわ。何、だよ。これ……」


 その殺風景な木箱の中には、まわりを囲むように、色とりどりの綺麗な花が、ひとつひとつの部屋に入れられていた。
 ……でも、その木箱の中心。大きな部屋に入れられているものを見て、ツバサは眉を顰めていた。


「……なに。え……? なんで真ん中だけ黒いんですか」


 別に、オレが言うべきことじゃない。これはただ、理事長が勝手に準備してたものであって、オレが文句とか、言えるわけないんだけど。
 ……ただ、前見た時も思った。まだあいつは、枯れてすらいないのに。まだあいつは、黒くなったわけじゃないのに。


「(ただ、太陽を取られてしまった、蕾のままの向日葵なだけなのに)」


 その箱に入っているのはもう真っ黒で、何の花かもわからないような、花らしきものが入っているだけ。まわりを囲む花に比べたら、異質そのものだ。


「(あいつは、異質なんかじゃないのに……)」


 あいつをそんな風に見てるのかと思うと、ムカムカしてくる。


「これにもね、いろいろわけがあるんだよ。……ぼくは、こうならないようにしたい。まわりの花が綺麗に咲いたとしても、真ん中が枯れていたら意味はないんだよ」

「(理事長……)」


 きっと、顔に出ていたんだと思う。こういう形でここへ表現したことに、オレが腹を立てていること。


「(すみませんね子どもで。早とちりで。苛ちでー)」


 そう思っていたら、ツバサがそっと大きな木箱に触れる。


「……よくはわかんないですけど。真ん中の花も、咲かせてやりたいですよね」

「(ツバサ……)」


 ツバサの瞳はその花を、どこか儚げに見つめていた。でも、そう思ってくれて、オレも嬉しかった。