「はあ。……ったく、なんでこうもみんなテンションが高いんだか」
「ははっ。みんなきっと、楽しいんだろうね?」
あいつらと一緒のタイミングで、部屋に入ったもんだと思っていた。
「あんたは楽しくないの?」
「わたし? ……すっごく、楽しいっ」
その顔が本当に嬉しそうで、一瞬目を奪われる。
「あ、あの。これね? キサちゃんにもらったの!」
「え」
その嬉しげなままの表情で、自分の首に提げるネックレスを突きながらオレに見せてくる。でも、そいつは……ッ。
「ど、どうかな? 似合う?」
「……豚に真珠」
「がーん……」
「馬子にも衣装」
「うぅ……」
「まあ普通」
「ふ、普通……」
「……何。そんなに気に入ったの?」
「ん? うんっ。キサちゃんが、わたしのために買ってくれたものだって言うから」
「……そう」
そんなに、喜べるものなんかじゃない。そんなもの、……本当はあげたくなんてなかったんだ。
「……吸い取ってくれるんだって。わたしの暗い気持ち」
「ふーん」
「いろいろね? キサちゃんが教えてくれたの! あとはね、吸いきった時に鍵を持った人が現れるんだって!」
「…………」
「それでね、その鍵を持った人が」
「あんたも早く部屋入れば」
「え……?」
「あんたはいいかもしれないけど、オレの部屋にみんな来るんだから。オレも早く風呂入っていろいろやんないといけないんだけど」
「あ。……そう、だね。うん。ごめんね! またあとで!」
そう言って、慌てて自分の部屋に入っていった。
「……そんなもの。あんたにとっては最悪なものだよ」
いいものなんかじゃない。だから。……そんな嬉しそうな顔で、それの話をオレにはしないで。
オレも自分の部屋に入って、シャワーを浴びる。
「……ははっ。ほんと。オレ最低……」
だって、あいつは何も知らない。ただ喜んでくれたのに、それをオレが、聞きたくなくて無理矢理話を終わらせた。
「話かけて、くれたのに……」
嬉しい。でも、聞きたくない。……ほんと、矛盾だらけだ。オレは。
さっと風呂から上がったら、ノックの音が聞こえた。
「はあ。……どれだけ楽しみなんだか」
ま、オレはあいつがいれば。……あいつが見られるだけで、十分だから。



