次のプラネタリウムも、見るまでは楽しそうだったのに、終わったら両サイドのオウリとツバサまで、あいつと同じ暗い顔になっていた。しかも、次の展示フロアは……。


「(ふね、ね……)」


 あいつがオウリと話してる。あいつが今までで一番つらそうな顔に、オウリが険しい顔になっていた。
 ……捨てられたのが舟の上。それも、子どもが乗るようなものだ。きっと、それはそれは小さかったんだろう。


「(海自体は別に大丈夫だったりするのかもしれない)」


 熱海。トーマとのデート。水族館。ちょっと苦手だったりするかも知れないけど、今の顔が一番あいつは苦しそうだ。


「(そんな小さい舟には乗ることがないから、大丈夫だろうけど……)」


 ちょっと、気にかけておいてやろう。

 植物園を見ているあおいは、どこか暗かった。それはみんなも気付いていたみたいだから、何とかしてあげたいと思っていると。


「み、みんなっ! あれやってみたいっ!」


 あおいがそう言って示したのは、押し花アートの体験場。自分からしたいなんて滅多に言わないから、みんなも嬉しくなって乗っかったけど。

 オレはコースターを作った。コーヒーばっかり飲むし。いいでしょ。チカと店員さんが、恋バナをしている最中に、さっさとオレは完成させた。


「(ははっ。すっごい一生懸命)」


 あまりにも必死だから、若干店員さんが引いてるし。でもすごい上手にスマホケースができたみたいで、嬉しそうに笑ってたからオレも嬉しかった。

 そのあと、あいつの言い方で言えば、夢の国に行った。さっきまで少し気まずかった雰囲気も、体験場のおかげでそんなことはなくなったらしい。あいつも、どこか安堵の笑みを浮かべていた。

 オウリがあおいのことを、きっと展示のところからずっと気にしてて声を掛けに行ってたけど、苦笑いをされて上手く躱されたみたいだ。


「……オウリ。どうしたの」

「ん? んーと。あーちゃんいろんなこと知ってるけど、花言葉は知らないんだって」

「え。そうなんだ」

「花は、……枯れちゃうからって。寂しそうに言ってた」

「(あおい……)」


 自分とどうしても重ねてしまうのだろう。もちろん枯らせは、しないけど。


「(……アキくん?)」


 今度は、アキくんと並んで蘭を見ていた。何かを話していたみたいだけど、アキくんはすぐこちらに戻ってきた。


「……アキくん? どうしたの?」

「え? ああ。ただ『ゆっくりでいい』って言いに行っただけだよ」


 そのことについては、オレが知るのはまだ先のことだった。


「(あ……)」


 あいつがハイビスカスの説明文のところで足を止めていた。花に、にこっと笑いかけてる辺り、若干変人さを感じるけど。


「(……何見てたの?)」


 あいつが見てた説明文には、自分が熱海で見た花言葉以外のものが書かれていた。一つの花に、たくさんの言葉があって驚いた。


「(笑う前、なんか触ってたけど……)」


 これだったらいいなって、ちょっと思った。


「……信じて、待ってて……」


『あなたを信じます』という文を指でなぞったあと、前を歩くみんなの元へ。今日はどうやら、昨日できなかった醍醐味をするらしいんだけど。


「なんでオレの部屋なの……」

「文句言わない~。あんたの部屋が真ん中だからだよー」


 そんな理由でどうやらみんな、お風呂に入ったあとオレの部屋に集合するみたいだ。


「なになに~? もしかして、夜あっちゃんの部屋に忍び込もうと」

「しないから」

「またまた~。照れちゃってー」

「ちょっ。……引っ付いてこないでよ」


 みんなで夕食を食べたあと、キサが部屋帰るまでオレの腕に引っ付いてきた。


「それじゃああとでね~!」


 アキくんたちは棟が違うから、ここで連絡通路を渡って自分の部屋へと向かった。


「おう! ヒナタ、すぐ行くからな!」

「オレの風呂覗きに来るの? チカ、そんな趣味あったんだ……」

「んなわけねえだろっ!」

「ちーちゃんきもーい」

「チカきもーい」


 チカがそう叫んで、オウリとキサがチカにそんなことを言ったあと、それぞれ部屋に入っていった。