そしたらご飯ができた頃に、ちょうどみんなが帰ってきた。みんながオレの体調に気がついてるのかどうかはよくわからなかったけど、ご飯を食べてたら嬉しそうな顔をされたから、ちょっとは心配を掛けたみたいだ。
「順番にお風呂どうぞー」
ご飯を食べたあと、一番風呂にナツメさんが入っているので、そのあとみんな時間差で入ることになった。
『葵ちゃん、変なアプリ使ってさ? 俺らの電話とかは受け取り拒否できるのに、自分からは発信できるらしいよ』
トーマがさっき、オレ特製『卵焼きに見せかけた辛子たっぷり卵』を食べる前に、そんなことを言っていた。
「……声、聞きたい……」
LIMEなら大丈夫って言われてたけど、どうせなら電話がしたい。
〈危篤です
今までありがとう〉
「(……うん。こんなもんでしょう)」
ん? ……〈電話頂戴〉って、一言だけ言えばいいって? 拗れてるオレに、そんな高度なことできると思う? 答えは否。
送った瞬間に電話が掛かってきた。もちろん相手はあおいだ。
「はい。もしも――」
『待ってて! 今滋養強壮に効くハブ捕まえていくからね!!』
「え。元気だからいらないし」
『え』
「ていうか、危篤って言ってんのに、滋養強壮ってもはや意味あるの?」
『……わ、わかんない……』
「…………」
『え。えっと……』
「ぶはっ……!」
『!?!?』
「やっぱバカだね」
『ご、ごめん。……た、体調は?』
「うん。いっぱい汗かいたから、もう大丈夫だよ。熱も下がった」
『……そ、か』
「そっちは? 熊と戦ってない?」
『滝に打たれてきたよ!』
「え。無理すんなって言ったじゃん」
『いやいや! 全然無理とかじゃなくって、めちゃくちゃハマっちゃっただけ!』
「あ。そう……」
『……声……』
「ん?」
『声。……聞けてよかった』
「……!」
『元気そうで。……よかった』
「……。あの、さ……」
『ん?』
「……お昼に、卵粥食べたんだけど」
『わっ、わたしじゃないよっ……!?!?』
「いや、知ってるし(すごい動揺……)」
『あ。……そ、そう……』
「(いや、落ち込んでるし。どうしたらいいの……)」
『……。そ、それで……?』
「……美味しかったんだよね」
『――……! ほんと……!?』
「うん。流石アヤメさんだよね(隠すつもりあるのかな)」
『そうだね! わあー! そっか~』
「(喜んでるし。ま、知ってるけど)」
『今日は? ヒナタくんどうしてたの?』
「アヤメさんが体調悪いの気づいてくれたから、みんなに内緒で休ませてくれた」
『そっかー! 流石アヤメさんっ!』
「……ありがとう」
『ん? なんか言った?』
「なんでトーマとデートなの?」
『え』
「ねえなんで」
『……デート、なの……?』
「は?」
『いやいや。わたしは、トーマさんと遊びに行く約束をしただけであって……』
「男女で出かけるんだからそういうことでしょうよ」
『男女の間にも友情は芽生えるよ……!?』
「いや、トーマの気持ち考えてあげなよ」
『はっ……!』
「……邪魔は、しないから」
『え?』
「オレはだけどね。アキくんとか暴走したらごめん」
『あははは……』
「楽しんできてね」
『ヒナタくん……』
「多分ついて回ると思うからさ」
『……そっか』
「帰りは、みんなと一緒に帰ってやって?」
『……! うんっ。そうだね。みんなに心配掛けたし』
「安心すると思うよ」
『うん。……ありがとう、ヒナタくん』
「ん。………………それじゃ」
『ああああのっ……!』
「ん?」
『……もう。ちょっとだけ……』
「……!」
『だ。……だめ?』
「下僕のくせに」
『ご。ごめん……』
「みんなに内緒で電話してるから」
『……そっか。わかった』



