『……わけは、話せないんです。でも、今のヒナタくんにはお母さんが必要なんです。……お願いしますアヤメさん。お母さんっ。……ヒナタくんを。助けてあげて……』
「(……ほんと。よく似てるわ、あなたたち)」
ぐっすり眠った彼の、ぬるくなってしまった熱冷まシートを貼り替えてやって、アヤメは買い物に出かけたのだった。
「……んっ。はあ……。……いま、なんじ……?」
だいぶ日が傾いてるみたいだけど、時刻を見たらまだ17時にもなっていなかった。
「……めっちゃ汗かいた……」
もう随分と体が楽だ。アヤメさんがタオルも持って来てくれていたので、体を拭いて、朝着ていた服に着替える。
「アヤメさん。汗めっちゃかいて。洗濯物どこに置いたらいいですか」
「えっ? 日向くん。まだ寝てなきゃ」
「もうだいぶいいんで、みんなが帰ってくるまでにシャキッとしとこうと思って」
「……大丈夫?」
「はい。いいんですこれで。オレはこういうスタンスなんで」
「それもそれでどうかと思うけど……」
「はは。ですよね。……でも、こんなのがオレなんです。みんなもわかってると思いますよ」
「……そう。わかったわ? じゃあ脱衣所のとこの籠に入れておいてくれる?」
「はーい」
「あと、動けそうだったら寝てた布団のシーツも一緒に入れておいてー」
「はーい」
「あとは本当にゆっくりしてて? みんなが帰ってくるまであのDVD見るも良し、連絡するも良し?」
「はは。そうですね。そうしまーす」
そのあと一旦部屋に戻って、シーツを剥がしたけどめっちゃ濡れてた。布団も干した方がよさそうだから、あとで聞いてみよう。
そのまま脱衣所に行って、布団を干す場所を聞いて干したあと、離れでDVDを見ることにした。
それからもう完全に元気になったから、アヤメさんのご飯の手伝いをしていた。
「日向くん、体調は?」
「え。ナツメさんも知ってたんですか」
「ええ。そうしたら、今日はダッシュで帰ってくるって言ってたのよ?」
「え。……なんかすみません」
「いいよ。親は子どもの心配をするのが仕事だ」
「……そっか」
ぽんと、頭に手を乗せられた。……こんなことも、もう何年されてないだろう。
「よし。じゃあ今日は、俺も手伝っちゃおっかな~?」
「そうね! 三人でみんなのご飯を作っちゃいましょうっ」
「オレはトーマ担当で」
三人でワイワイがやがやご飯を作っていた。こんなことも、もうすることなんてないと思ってたのに。……胸がいっぱいだ。



