あおいが出ていってしばらくして。離れに戻ったら、みんなが着替えて声が掛かるのを待っていたみたいだ。


「あ! ひなクン! どこ行ってたのー?」

「昨日の夜からいないし、どうしたのかと思った」


 早速来たし。……さてどうするか。


「ナツメさんたちと話してたら遅くなって。帰ってきて寝ようと思ったんだけど、キサの寝相がすごすぎて避難してた」

「なんだとお!?」


 キサだけはそう言うけど、みんなは「ああ……」って納得してくれた。よし。成功。


「みんな~? 朝ご飯よー」

「はーい」
「♪~」


 あ。どうしよう。そんなに食欲ないけど……まあ、いっか。そんなにいっつも食べるわけじゃないし。
 リビングに行く途中、あおいがトーマと話してる声が聞こえた。みんなも、声が元気そうだったのでほっとしたのか、頬が緩んでいた。そしてみんなでご飯を食べていたら……。


「んで。お前らはどうするわけ」


 あおいを見送ったのか、トーマが帰ってきた。若干苛ついてる顔をしてるけど、こっちの方が苛ついてる。


『明日は家族で遊びに出かけるの。杜真が誘ってくれたのよー。ただ明後日は杜真、葵ちゃんとデートみたいだけどね?』


 アヤメさんにチクられてかわいそうだとは思うけど、……流石は母。いいアシスト。


「どうすっかな~……あ! アヤメさんおかわり!」

「はいは~い」


 まあ行きの乗り物の中で、あおいが修行中は四国の観光でもしておこうという話にはなっていた。


「俺は、待っておくことも大事だと思う」

「アキくん。それオレが言ったやつ……」

「でも、確かにそうよね。アタシも別に、お寺まで付いて行く必要はないと思うし」

「うん! みんなでアオイちゃんを見守ろう!」

「お前ら、ここまで来ておいてよく言うわ」

「でもでも! あおいチャンの元気な姿見て安心したよ! ね?」

「(こくこく!)」

「じゃあ、あたし四国観光できなかったから、このチケット使って今日明日遊びまくろう!」


「おー!」賛成するオレらに、トーマはめちゃくちゃ嫌そうな顔をしていた。その通り。デートは邪魔させてもらいますよっと。

 それから今日はトーマを連れて、観光をすることになったんだけど……。


「あ。残念だけど、日向くんは今日あたしが一日借りることになってるの」

「え?」

「えー。どうしてー? アヤメさーん」

「どうしてか? ……そんなの、デートに決まってるじゃない」

「え……」

「菖蒲さん。日向がめっちゃ引いてます」

「あらヤダ。失礼しちゃうわ! 昨日約束したじゃないっ」

「……え?」

「菖蒲さん。日向全然覚えてないみたいよ?」

「酷いっ。……昨日。あの人がいてもいいって。言ってくれたのにっ」

「え……」

「アヤメさーん。やっぱりヒナタ、ガチで引いてます」

「まあ冗談はさておいて、ちょっとね? 約束してたのはほんとなの。だから、今日は日向くん借りるからね」

「(約束……してたっけ? あ。もしかしてあおいのことで聞きたいことでもあるのかな……)」

「……そうなの? ひなクン?」

「??」

「あ。そうだった。思い出した。昨日二人がイチャこいてるところを目撃しちゃったから、内緒にする代わりにご馳走してもらうんだった。そーだ。忘れてたー」

「そうそう! そういうことなのー」

「……いやいや」