すべてはあの花のために❾


 指で、そっとあおいの頬を撫でると、ぴくっとあおいが震える。


「あんたが笑ってたら、みんな笑えるから」

「……ひなたくん、も……?」

「オレ? ……あんたが、本当に笑えたら」

「え」


 とんと、指でやさしく胸を突く。


「ほんとのほんとに、笑えたら。……オレは、それでいい」

「……ひなた、くん……?」

「あんたが幸せなら、……オレも笑えるから」

「……幸せ」

「うん。……だから、幸せになってね」

「え」


 不安そうに見上げてくるあおいに、小さく笑いかける。


「修行、……無理しない程度に、頑張って強くなってね」

「……えっと。……うん。わ、わかった」

「あんたが元気なら、みんな元気だから」

「……。ひなた、くんは……?」

「え? ……あんたが、ほんとに元気なら」

「…………」

「あんまり遅いと、誰か来るかも。オレも、あんたが行ったらみんなに合流しないと」


 すっと、あおいの頬に添えている手を下ろそうとしたら、あおいがその手を自分で掴んで頬に当てた。


「……? 時間、なるよ」

「ひなたくんも。……無理、しないで」

「……ありがと。でも、みんなに心配、掛けたくないから」

「……っ。今、だけは。……心配し合いっこ。……する」

「……そ」

「だから。……元気になったら。教えて」

「連絡しても、修行中になってるじゃん」

「……LIMEなら。大丈夫、だから」

「(あおい……)」

「だから。……心配、だから。教えて。……無理、しないで」

「……わかった。連絡、するね」

「……。うんっ」


 なんだか泣き出しそうなあおいの頭を、空いた手で撫でてやった。


「大丈夫……?」

「うん。まあちゃんと歩けるし、薬が効いたかも」


 あおいは、大きな荷物を持って部屋を出ようとしていた。オレは時間差で出ようと思って、取り敢えず見送りをするのに立ち上がって壁にもたれ掛かる。


「……無理」

「しないしない。いっつもしてないじゃん、オレ」

「いつもはもっとして欲しい……」

「あんた下僕でしょ? 使ってなんぼだし」

「……。今は、もっと使って欲しかった」

「ドMだね」

「…………」

「……あんたも。無理、しないで」

「わたし、無理してない」

「ずっと道場電気点いてたし、布団使ってないって言ってた。寝てないんでしょ?」

「…………」

「お寺では、ちゃんと寝るんだよ? いい?」

「うん。……それは、ちゃんとする」

「……そろそろ時間やばいでしょ? 行っておいで」

「…………」

「……?」


 少し俯きながら、ぎゅうとオレの服を掴む。


「……うん。ちゃんと、わかってるから。大丈夫」


 心配だ、って。そう言ってることくらい。オレだってちゃんとわかってる。


「……。みんなには、心配掛けないようにする」

「え?」

「ヒナタくんのこと。……言わない」

「……そ。ありがと」

「みんなが来てること知ってるのも、……言わないね」

「うん。じゃないとオレがみんなに怒られるからね」

「はは。そっか」

「みんなには、内緒ね」

「うん。……それじゃ、行ってくるね!」

「………………」

「……? ひなたく――」