「……あの。あいつ、ここへ修行に来ることを誰にも言わなかったんです」
「え? そうなの?」
「はい。だから多分、一人になることも多いと思うんです」
「だから」と言って、オレは音を拾うだけの機械を渡す。
「別のところでも、あいつがこれを持ってたら、こっちの機械から声が聞こえます」
「へえ。そんな機械もあるんだ」
「でもこれは、録音ができないんです。だから、どなたかのボイスレコーダーか何かで、拾った音を録音して欲しくて」
「わかったわ。あたしがするわね」
「ありがとうございます。……また何かあったら、番号これなんで。連絡してください」
そう言って、三人にメールで携帯番号を送る。
「それじゃあ、そろそろ戻ります。ありがとうございました。いろいろと」
「え、……ええ。またそっちに行く時があったら、ゆっくり話しましょうね??」
「ま、また何かあったら、いつでも言ってきてね??」
「わ、わしらは、お前さんの駒じゃからのう??」
「……? はい。いい働き、期待してますね。あと、オレのことは絶対に話さないでください。それから、録音もバレないように。データは消去を……機械は、もうぶっ壊してくれていいので。証拠は消しておいてください。それでは。失礼します」
――ガン! と、扉に肩を思い切りぶつけて痛い。でも、ナツメさんが待ってるから、急いで山を下りていった。
「……ね、ねえ」
「あ、ああ……」
「……なんでわしの分まで知っとるんじゃ?」
あれはデマなんかではなく、本当に情報を持っていたと知った三人は、やっぱり少しヒナタが怖くなったらしい……。



