それから離れに戻ろうとしたら、まだみんなが外に出ていた。「戻らないとあいつに見つかるかもしれないよ」って言ったら、急いで離れに戻っていったけど。
「(あ。朝ご飯のリクエスト聞くの忘れたし)」
まあ明後日のだからまだ先だし。あとでも十分でしょう。
それから、トーマの部屋がそういえばぐちゃぐちゃのままだったと思って謝りに行こうと思ったら、部屋はまだそのままだったのでバレないうちにさっさと元通りにした。
下着は全然気にならないけど写真が気になりつつ、あおいが寝る部屋を後ろ髪を引かれる思いで通り過ぎて、離れへと足を進めた。
……ちょうど、日付が変わる。離れから見える道場には、まだ明かりが点いていた。
「(はあ。まだ修行してるんですか、あいつは)」
心配になって、見つからないようにこっそり様子を見に行こうと思って、道場を覗いたら……。
「……ッ!? っ、おいっ!」
ガラガラッと勢いよく戸を開け、倒れているあおいに駆け寄る。
「……すっごい汗。息も浅いし、手も……ッ、冷たっ」
急いで、ただ首に巻いていたタオルで汗を拭いてやる。
「起きたらいくらでも殴られてやるから」
道着の帯を外し、上着を脱がす。
「――……!? ばっ。……なんですぐ下着なのっ!」
さっきあんな話をしたせいで余計意識してしまうが、そんなこと言ってられない。急いで顔から腰元までを、しっかりと拭ってやる。
「……はあ。はあ。はあ」
「しっかり。ゆっくり息して」
何か体を温めるものはないかと思って、入り口のところの棚を探したら、毛布があったのでそれを持って来て包んでやる。それでもまだ冷たくて、体はカタカタと震えていた。
「……っ、半殺しにしてもいいから」
そう言いながら上半身の服を脱いで、冷たすぎるあおいの体を抱き締め、一緒に毛布に包まった。
「(だいぶ、温かくなったかな……)」
抱き締めた時は、まるで氷でも抱えているみたいに冷たかった。手にそっと触れると、まだ完全ではないけどだいぶ温かさを取り戻していた。
その、細くて白い小さな手をそっと持ち上げ、指先に軽く口づけする。
「(……もう。大丈夫か)」
そう思って、ゆっくりと床に横たわらせる。表情も落ち着いていて、先程までの苦しい顔のあおいはいなかった。
「……今は、どうか起きないで……」
言い訳なんてない。できない。この、今のオレにはこの気持ちは言えないから。……でも。止まんない。溢れるんだ。想いが。
毛布の上へ横になるあおいを、組み敷くように上から見下ろす。
「……首の。上手に隠したね。鎖骨も。……胸も」
そっと。自分がつけた印の場所を、指で触れる。
そこは、白くて。滑らかで。あたたかく……。そしてやわらかい。
「これは。あれだから。主人を心配させたから……とかだからっ」
それから。さっきあんな話振ってきたアヤメさんたちのせいだから。
そっと、あおいの下着を指に引っかけ少しだけ下げ、そこに顔を埋めて、新しく印をつける。
「……別に。あれだから。この印は、下僕って印……なんだから」
完全に、魔が差した。
……やって後悔。なんでこうも、こいつを見るとここまで暴走するのか。自分のキャラが壊れていくし。
あおいが起きてしまわないように、道着の上を着させようとしたところで。
「……ん……」
「(げ……)」
ヤバいと思った時にはもう遅い。目の前のこいつは、目を開けようとしている。
「(いや、もう流石に今の状況完全に寝込みを襲う変態じゃん。言い訳とか思いつかないしっ。ていうか本当のことなんて言えない! オレはもう、こいつよりも変態と化すわ。最悪……)」
もう諦めたよね、うん。しょうがない。オレは変態ですって言えばいいんだよ。それで解決。



