それからオレは、あいつとの話を録音するように、アヤメさんにもお願いした。
『……いつかちゃんと、わけを話してね』
「はい。必ず」
『……助けて。あげられる……?』
「まだわかりません。でも、アヤメさんにお願いしたのは最終手段なので。これを使わずに助けられるように、頑張ります」
『他に何かすることがあれば言ってね』
「はい。その時は。……必ず助けます」
『あたしたちも、葵ちゃんに助けてもらったようなものだから。なんでも協力するわ』
「はい。ありがとうございます。……このことは内緒に。データも、オレに渡したら消去をしてくださいね」
『ええ。もちろんよ。……あの人にも言って大丈夫かしら』
「はい。お二人でしたら。トーマには言わないでください」
『わかったわ。それじゃあ、気をつけて来なさいね』
「はい。多分、トーマたちよりも先に着くので、ナツメさんに話す時はオレも一緒に話させてください」
『ありがとう。それじゃ、待ってるわ。今日の晩ご飯は何がいいかしら?』
「え? な、なんでも……」
『あら。若葉ちゃんには劣るかもしれないけど、あたしもそこそこ美味しいご飯作れるのよ~?』
「――――」
『ん? 日向くん?』
「……じゃあ、アヤメさんの得意料理を、たくさんお願いします」
『……わかったわ? それじゃあね』
「はい。失礼します」
そう言って、すぐに電話を切った。壁に、こつんと頭を付ける。
「……母さんのご飯。もう、何年も食べてないな……」
最近は人の家で食べることが多かったけど。もう、自分が作ったものなんて食べたくなんてなかった。……一人で。食べたくなかった。
「お邪魔しまーす」
「♪~♪」
「「いらっしゃ~い」」
みんなにも事前に二人にはお世話になることを話したと伝えていた。アヤメさんも、ナツメさんにオレらが来ることは言ってたみたいで、すんなり出迎えてくれた。
「晩ご飯ね、まだ少しかかるの。それまでこの人が離れの方に案内してくれるから、荷物とか整理したあとお風呂に入ってくるといいわ」
お言葉に甘えて、そのまま案内してもらうことに。自分たちの荷物を置かせてもらって、キサが一番乗りでお風呂をいただくことになった。
「ああ、キサちゃんは女の子で別の部屋がいいだろう」
「こいつらと全然一緒でいいですよ?」
「え。そ、そうなの?」
ナツメさんが心配そうに、オレらは若干『それはヤダ』という声を上げる。
「でもさ、年頃の女の子だし。菊が怒るんじゃ……」
ナツメさんの意見に大きく頷く。過去何回こいつと一緒に寝て、睡眠を妨害されたことか。
「いやいや、今頃別になる方が気持ち悪いですし! 菊ちゃんも、こいつらのことは信用してるんで全然大丈夫ですよ。もしものことがあったらこの世にいないと思いますし」
みんなして若干震えた。キサがちょっと怖かったからだ。



