「……はあ？ 駒なんだからそれぐらいしてください。それじゃ」
そんなこんなで、理事長の伝を使ってオレらは最速で徳島にあるトーマの家に直行。その間みんなは楽しそうにしてたけど、取り敢えずオレはアヤメさんに連絡を入れることにした。
『はい。どちらさまですか？』
「ご無沙汰してます。ヒナタです」
『あら日向くん！ どうしたの？』
「申し訳ないんですけど、しばらくそちらにお世話になりたいんです。ほんと、急でごめんなさい」
『全然いいわよ～。……ふふっ。今日はね、実は葵ちゃんも来るのよー！』
「はい。……実は、その件に関しても少しだけお話しておきたくて」
『ん？ どういうこと？』
「……話したら長くなるんですけど、今大丈夫ですか？」
『あ。じゃあちょっと待っててくれる？』
耳に保留中のメロディーが流れてくる。でも、アヤメさんはすぐに帰ってきた。
『ごめんね？ 火をつけっぱだったの忘れてて』
「頼みますよ。オレのせいで火事とかやめてくださいよ」
『大丈夫大丈夫～』
「（ほんとかな……）」
『それで？ どうしたのかしら』
「今日、あいつがそちらに行くことは、あいつ誰にも言ってなかったんです」
『え？』
「お世話になるつもりだったからか、トーマには連絡してたみたいですけど」
『あら！ もしかして二人で内緒のデート!?』
「いえ違います。一人で内緒の修行の旅です」
『しゅ、修行……？』
「それについてはオレもよくはわからないんで、あいつに聞いてみてもらえたらと思うんですけど」
『わ、わかったわ……』
「でもやっぱり、そんなあいつをほっとけないんで、みんなでそちらに行きたいと思ったんです」
『あら！ トーマのデートを邪魔するのね！ どんどんやっちゃって！』
「いや、まずデートさせないですけど。アヤメさん、それでいいんですか……」
『愛情表現よ！』
「そ。そうですか……」
『あ。ちょっと待って？ みんなって言った？』
「あ。はい。マジでみんなです。あのメンバーです」
『そうね……だったら離れ屋の方がいいわね。今のうちに掃除しておくわ』
「すみません」
『ううん。久し振りにみんなと会えると思ったら、楽しみでしょうがないわ』
「そう言っていただけて助かります」
『もしかして、葵ちゃんにはバレたらいけないのかしら？』
「はい。多分、オレらには言いたくなかったんだと思うので」
『やっぱりデート!?』
「だったら思い切り邪魔してやりますけどね」
『あらあらー……』
「……何か。考えたいことがあるんだと思うんです。でもみんな、そばで見てないと心配なんです。だからこうして、あいつにはバレないようにしようと」
『葵ちゃんの邪魔はしたくない、ということね』
「はい。……みんな、大切なんです。あいつのこと」
『うん。十分伝わってるわ。みんなのことは、内緒にしておきましょうね』
「はい。……それじゃあ、本題に入ります」
『え？ ど、どういうこと？』
「さっきのは、みんなを代表して。そして、あいつの気持ちも代弁してのお願いで。今からは、……ただオレからのお願いです」
『日向くんの……？』
「理由はオレの口からは言えないんです。……でも、どうか助けて欲しいんです」
『え!? ど、どうしたの……？』
「オレと一緒に、助けて欲しい人がいるんです」
