「(……寝た、か)」
先生とオウリ、あおいからすうすうという寝息が聞こえてきた。
「(いや、寝られるわけないじゃん)」
バッチリ先生との会話は録音した。後半は先生側に行ったからわからないけど、前半はばっちりオレが声を拾えたと思う。
「(だっていきなり『お○松〇ん』とか叫ぶんだもん。驚いて目覚めちゃったじゃん)」
でも、元気そうでよかった。先生と話してた最後は、よく聞こえなかったけどちょっとつらそうだった。
そっと体を起こして、あいつとオウリが並んで寝ているところへ行く。
「……ちゃんと、聞こえてたからね」
怪盗に対して、月を見ながら話していた。白い綺麗な顔で眠るあおいに、小さくそう話す。
「……信じて、待ってて」
ふわり、少しだけそのやわらかい髪を撫でたあと、彼女の左手首に結ばれたミサンガに触れた。
「必ず、助けてあげるから」
そっと、寝ている彼女を起こさないように手を軽く持ち上げて。少しだけそこに、口づけを落とした。
「はは。絶対喜ぶだろうから」
カメラを起動して、音が出るとこを塞いでパシャリ。オウリとの寝顔のツーショットを撮ってあげた。
「……おやすみあおい。無理しないようにね」
あおいが、かくんかくんと。今にも椅子から落ちそうだったので、そっと体に触れて、オウリの肩にもたれ掛からせるように動かしてやった。
「(にしても、あおいもオウリもどこに行ってたんだろう……)」
バラバラに出ていって、バラバラに帰ってきたから、一緒の場所には行ってないと思うんだけど。
「(そういえばオウリ、ここに来た時すごいそわそわしてた……)」
もしかして……。
ある予想をして、自分もほんの少しだけまた寝ることにした。
「みんな、ごめんね」
朝起きてから、あおいがオレらにそう謝った。
「傍にいてくれてありがとうっ」
そう言われて、泊まることを決めてよかったと思ったけど。
「あたしたち、いつの間に寝たのかな?」
「なんか体が痛いよお……」
「(こくこく)」
「み、みんな疲れてたみたいだったから、昨日はいつの間にか結構早い時間に寝てたわよ??」
「(いや、慌てすぎでしょ)」
誰だよ、任せておけって言ったの。
まあ、みんなもそんなに前日寝られてなかったから、そうかあって納得してたけどね。
病室を出る時、先生があいつを引き止めた。オレらは外で待ってることにしたけど。
『あとで送ってくださいね』
『わかってるわよ……』
そう目でやりとりをして、病室を出た。
そのあとなんだか、嬉しそうにあおいが出てきたから、何を話したのかちょっと気になった。
それから先生からすぐデータが送られてきたけど、その先生はと言うと、どうやら昨日レンに手紙を預かってから、理事長に相談してたらしい。
それで結局、そのレンから預かったものを渡したことと、それからこれはいつも言うらしいんだけど、『起こしてくれて、助けてくれてありがとう』って。理事長が出なかったから、伝言を残したみたい。
そのあとゆっくり寝ようと思ったら、オレらが出ていったあと、すぐにまたカオルが来て全然寝られなかったらしいけどね。かわいそうに。



