すべてはあの花のために❾


 先生の言葉の途中で、バーンッと、大きな音を立てて病室の扉が開いた。


「「(……え)」」


 オレと先生は目が点になり、他のみんなは首を傾げながら、でもあおいが寝てるから『起こすんじゃねえよ』って睨んでいたりもしてた。


「ん~もうっ。捜したじゃないですかあ。コズエさ~ん」

「……か、かおる……」

「(え。もしかしてさ、目をつけられたって……)」


 そう言うや否や、カオルは先生に思い切り飛び込んで抱きついてきた。でも、先生は勢いよくそれから逃れるようにベッドから飛び降りて思い切り枕をぶつけていた。


「ちょっとお~。なんでそんなことするんですかあ~」

「あったり前でしょ!? ここは病院! 静かに大人しくしてなさい! ていうか帰りなさい今すぐ!!」

「(いやいや、一番うるさいのあなたですよ……)」


 いきなり変な男が登場してきたことにもだけど、先生が元気いっぱいで病室中を逃げ回ってる姿に、みんなが驚きを隠せない。
 でも、ここまでうるさいのに全然起きないあおいの方に、オレは正直驚きを隠せなかったけど。


「……せ、先生……?」

「はっ!」

「あ。あらあらあら~? みなさんお揃いでしたか~。これは参ったな~(んーちゅッ)」

「ちょ、……カオル! ちょっと離れなさい!」

「嫌ですよお。もう離れないって言ったじゃないですかあー」

「(これは連絡取れないわ。ごめん先生……)」


 カオルが落ち着くまで、もう少々お待ちください……▼


「いや~どうしましょう。ぼくバレたら殺されるかもー」

「ちょっと、お願いだから静かにしててくれる……!?」

「はあ。……どういうことか、説明してくれるんですよねえ?」


 みんなはもう、わけがわからずといった感じで目が点だ。何となくわかっているオレが話を促す。


「……いえね? 実は言うと、私あの件のあと、しばらくしたら退院したのよ」


(※先生が何かを言う度に驚くのでみんなの反応はカットします。悪しからず)


「それで、ひょんなことから彼と知り合いになったんだけど……」

「コズエさんはぼくのヒーローなんですう(きゃっ)」

「(ぶん殴りたい)」


 なんでかって? そんなの、あおいの唇奪った挙げ句犯す寸前までやりやがった奴だからだし!


「まあ、今ちょっとお世話になっている家の関係でね。べたべた引っ付いてくるのよこいつ……」

「まあ! そんなに嬉しいんですかあー?」

「(先生かわいそうに……)」

「みんなには、私が前から元気になっていたことはわけがあって黙ってたの、ごめんなさい」

「そんなあ、コズエさんが謝ることないですよお」

「(うざいわ~……。これは確かに、今のうちに横になりたい気持ちもわかる……)」

「ごめんね、みんな。でももうピンピンだからね! こいつのことは視界に入れないで! 苛つくだけだから!」

「ぼくの視界にはコズエさんしか入ってませーん」

「(いいかな。一発ぐらい殴ってもあの件で殴ったってバレないよね、絶対)」


 そしたらふと、カオルが眠っているあおいの方に視線を向けた。


「……あらまあ。彼女はどうされたんですう?」

「あ、……ああ。葵ならさっき過呼吸で倒れて……」


 アキくんが、若干引き気味ながらもご丁寧にカオルに説明してるけど……アキくんも、酷い時あいつにあんな感じだよ? わかってる? 自分も改めた方がいいよ絶対。


「あら、そうなんですう? ……あ。もしかして、メール見てましたあ?」


 カオルがそう聞いてきて、みんなは目を見開いたあと戦闘態勢になる。


「……なんで、そう思うのかなあー?」

「ええ? ……何でだと思いますう?」


 ピリピリとした雰囲気。バチバチと火花が散る。


「確かにあっちゃんはスマホを見てたけど、メールでなんてあたしたちにもわからなかった」

「あらまあそうなんですかあ。余計なこと言っちゃいましたかねえコズエさんっ」

「やっぱりあんたか」