すべてはあの花のために❾


「(え。どう、したの……)」


 スマホを見ながら、カタカタと震えるあいつがいた。みんなは気がついてないみたい。


「……っ。あ、アキくん」

「ん? ……どうした」


 そう言って、あいつの方を視線で見るように促す。


「っ、どうしだんだ葵は……」

「わかんないけど、今オレらのこと見えてないっぽいから、ちょっと気を紛らわせてあげてよ」

「ああ。……ちょっと行ってくる」


 アキくんが立ったのはあいつ以外のみんなわかったけど、あおいだけはただ、だんだん顔色が悪くなっていくばかりだった。


 ――パンッ!


「――!」


 そうしてやっと、こちらに気がついたけど。


「過呼吸だ! センセ! ナースコール!」


 上手く呼吸ができないまま、あおいは倒れ込んでしまった。
 そのあと看護師さんたちが来て、取り敢えずちゃんと呼吸ができるようになって眠りについたけど……。


「過呼吸になるほどの内容だったってことだよな」


 あおいは倒れる前にスマホを見ていた。


「(でも今回は、体が冷たかったわけじゃない……)」


 キサも、何となくは勘付いてるはずだ。


「(だから今回は、別に無理をしたわけじゃないから葵が出てくる心配はないはずだ)」


 ただ、それだけ。過呼吸になるくらいの恐怖か何かを、感じたんだ。


「あおいさんが目を覚ました時、みんながそんな顔をしてると、心配を掛けてしまったって自分を責めてしまうと思うわ?」


 あいつが倒れたことで動揺していたみんなを落ち着かせようと、先生がそう声を掛けてくれる。先生からそう言われて、オレらは心配だったけど小さく笑い合った。


「それじゃあ、ちょっと横になっていいかしら」

「うん! ……ごめんねえ、先生……」

「(しゅん……)」


 あいつがなかなか目を覚まさなかったから、みんなでここに泊まることになった。


「みんな、あおいさんが心配なのね」

「そうですね。アタシたちの、原動力になってるかもしれません」

「……そっか。それじゃあ、お家の方にはちゃんと連絡しておくのよ? ベッドは流石に無理だけど、毛布もそこの扉の中にあるからそれ使ってね」

「ありがとう先生」

「それじゃあ、みんなも休むんで。あおいさんが心配なのもわかるけど」

「はい。わかってるよせんせー」


 そう言ってみんなはあいつが寝ているベッドの方に固まって様子を見ていた。


「…………」

「どうしたんですか」


 険しい顔をしながら、先生が疲れた表情で横になる。


「……いえね。久し振りにゆっくりできるなと思って」

「そうでしょうね。オレに一つも返事してくれないんだから」


 みんなには聞こえないように、背を向けて話す。


「だから、悪かったと思ってるわよ……」

「駒の分際で、棋士の指示に無視とかいい度胸ですね」

「ごめんごめん。……でも、ほんと忙しかったの。今日も逃げてきたんだし」

「は?」

「なんでもないわ。でも、取り敢えずあおいさんが倒れた原因は何となくわかるわ」

「……っ、なんでなんですか」

「……恐らくだけど――」