「……あおいちゃん」
『え……?』
「……私の母の任された仕事は、薬の動きの調査だったの」
『……!!』
「どこへ流れているのか調べたら、道明寺が怪しいってことになったんだけれど。それでも、確かな証拠はなかった」
『……こずえ。せんせい……?』
「そこでもっと調べたら、あなたのことが原因なんじゃないのかって。……初めは、信じられなかったけれどね」
『……。あ、め……』
「それから母に命じられたのは、あなたの身柄を拘束すること。他の公安もいたのだけど、彼らは家を調べる任に就いてたから。……それができなければ、手を下す許可も下りていたわ」
『……そう、ですよね』
「それから母は柊の社員を装い、内部に潜入した。……小さな少女を見て、驚愕したらしいわ」
『きょ、驚愕……?』
「ええ。……あんな小さな子が、恐ろしいものを作っていたから」
『…………』
「でも母は、守りが堅かったあなたの身を保護することはできなかった」
『え? さっきは。拘束って……』
「潜入した際にね? 家から話は聞いたの。あなたのことを」
『……聞いたのに。保護、なんて……』
「確かに、家での言い方は酷いものだった。けれどあなたを見ていて、何かわけがあるんだろうと思ったらしいわ。……それで、なんとか助けたいと思った」
『…………っ』
「公安の仕事は差し置いて、あの家であなたの名前を探していたの。……バレないように」
『……。そんなの。知らなくて……』
「やっとあなたと接触する機会ができた頃に、対象者……柊くんのご両親の監視に就いた」
『……トウヤさん。スミレさん……』
「母以外にも、一緒に組んでたあの家の人間がいたから下手に動けなかったの。……母も、後悔してるわ。彼らを守り切れなかったこと」
『……。ぜんぶ。わたしが。悪い、から……』
「いいえあおいちゃん。私も母も、ちゃんとあなたのことは知ってるわ。私も、……母の情報は半信半疑だったから、調べさせてもらったけれどね?」
『……。せんせい……』
「ちゃんと調べたからこそ言うわ。……いいえ、やっと言える。あおいちゃん。私に、あなたを助けさせて欲しいの」
『……!! せんせ……』
「あなたも、一緒にもう一人のあおいちゃんを助けてくれるのね。……あなたの口から、状況も心情も聞くことができてよかったわ」
『え……!?』
「謝ってくれてありがとう。……母も、あなたのことを救えなくて悔しそうにしてたの。何もかも片がついたら、是非会いに来て?」
『……。わたしは。行けないけど。……でも、わたしの分まで葵が話してくれると思う!』
「ええそうね。あと、母と、それから私から。……あの頃に、助けてあげられなくてごめんねって、母が。私からは、……今も、まだ助けてあげられてなくて、ごめんなさい」
『……! そ、んな……』
「あおいちゃんも危険だとか言うかもしれないけれど、私の場合はこれが仕事だからね? この件なんとかしないと、私職を失うのよ~」
『ええ……?!』
「そしたら路頭に迷っちゃうからね~。……でもキング。守り切ってみせるわ。そして必ず、チェックメイトしに行くわよ」
『……。コズエ。先生……』



