「大丈夫だよ。キングを守りながら敵陣へと踏み込んでいくのが、駒の仕事だ。守るべきキングを傷つけようものなら、オレがぶっ飛ばすから安心して? 『駒の分際で』って言うから」
『……ひ、なた……』
「安心して? アオイにとって好きな人がアキくんでも、何よりも大事なのはあいつだってこと。きっとみんなわかってくれる」
『…………』
「安心して? あいつの命を助けるために生まれたけど、早く名前を呼んで欲しいんだって思ってることも、ちゃんとわかってくれる」
『…………っ』
「安心して? 自分だって、削りたくないんだって。でも、あの時あいつを助けるにはこうするしかなかったこと。ちゃんとわかってくれる」
『……。わたし、は。……っ』
「安心して? 家にあいつを、あいつの大事な花咲家の人たちを人質に取られて、わざとあいつに嫌われるように振る舞ってきたことも。ちゃんと話せば理解してくれるよ」
『……。ひ。なた……』
「安心して? 今までひとりぼっちでつらかったよね。オレがアオイの味方になってあげられて、本当によかった。……でも、もっと増えるよアオイの味方。一緒に、あいつを助けようとしてくれる人たち」
『……。ひな、た。……っ』
「安心してアオイ。……もうアオイは、一人じゃないよ」
『――……!! ……っ。ひなたあ……』
「うん。何?」
『……。わかって。くれる、かな……』
「うん。オレがわからせるよ」
部屋の隅で、四人が震え上がっているのはさておいて。
『……わたしが。……わたしのせいで。彼らを傷つけたことも? わたしが。無理矢理。……薬とか。装置とかを。……作らされてた。ことも……?』
「うん。ていうか、もう知ってると思うけど」
『そ、それでも。……無理矢理されてる。なんて。……言ってない、から……』
「……うん。絶対に大丈夫だよ」
だってもう、こんなにもアオイのことを思ってみんな、つらそうな。悔しそうな顔をしてくれるんだから。
『……寂しかったんだ。ずっと』
「うん」
『つらかったんだっ。ずっと……っ』
「うん」
『助けて。……なんて。あんなことしておいて。言えるわけ。ない……っ』
「……ううん。言ったでしょ? アオイは悪くないよ」
そして、父親のアザミも悪くなんてないんだ。
『……。一緒に。葵を助けて欲しい……』
「うん。助けるよ」
『……。わたしも……』
「うん。もちろんだよ」
『……っ』
「解放してあげるからね。絶対に。だから信じて」
『……。ひ、な……』
「オレは必ず助けるよ。あの家のせいで傷ついた人たちを、全員ね」
「「「「――――」」」」
確証なんてない。でもその場の全員、ヒナタの真っ直ぐ言葉で、本当にできそうな気がして。真っ暗だっただけの先の未来に、一筋の光が真っ直ぐに差し込んでくる感覚に陥る。



