すべてはあの花のために❾


 電話の向こうで、アオイが驚きを隠せない様子が見ていなくてもわかる。


「ルークは、残念なことにクイーンがいなくなると使い物にならなそうだからね」

『え……?』

「(当たってますぅ~)」

「ビショップは、ああは見えても結構頭が切れる。監督としていい仕事してくれると思ってるよ」

『……そう』

「(全然話してないのに、そこまでわかるんだ……!)」

「ナイトは、……ちゃんと姫を助けてくれるから」

『ひ、姫……??』

「(九条……)」

「……そんな感じ。どうどう? いい駒揃ったでしょー」

『……あ、あのさ。ヒナタ……』

「ん? 何?」

『り、理事長は……?』

「…………」

『理事長も、それなりに頑張ってくれてるんじゃ……』

「あれだよ。理事長は【PAWN(ポーン)】だから」

『…………』

「使いやすいしいっぱい駒あるし、昇格だってするし」

『……本音は?』

「最近会話してなかったから忘れてた」

『だと思った』

「「「「(……理事長……)」」」」

「でもポーンだって大事な駒だ。……ポーンも、それなりにオレはたくさん集めたよ」

『……うん。そっか』

「花咲家の人だってそう。今はたとえポーンだとしても、それはきっと大きな力になる」

「「「「(花咲……!?)」」」

『……うん。そうだね』

「(あおいちゃんを人質に取られていなければ、彼らはもっと動けたはずなのに……)」

「……アオイ。本当にいい駒が揃ったんだ。きっと、名字も見つかるよ」

『…………』

「だからアオイも、こちら側で一緒に盤に乗って欲しいんだ」

『ヒナタ……』

「少なくとも、彼らはあいつの事情は知ってる。でも、アオイが考えてることとかは知らない。……そうでしょ?」

『…………』


「(……レン。もしかしてさ)」

「(電話のお相手は……)」

「(……もう一人の、あおいさんです)」

「(やっぱり、そうだったのね……)」


 スケッチブックに描かれた向日葵。それは、こちら側を向いて咲いていたのだから。