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 時刻は21時。


「……にしても、いきなりどうしたんだろうレン」


 お昼にレンから、急で申し訳ないけど今日少しだけ時間を作ってくれって言われた。


「誰かの誕生日だっけ? 俺は5月だし……」


 それに、レンから連絡があること自体珍しいことだ。


「えーっと、何号室だったっけ……」


 カンカンと、階段を上っていった。


「……あ。ここだ」


 呼び鈴を鳴らすと、中がいきなり騒がしくなったあと静かになった。


「え? なんでいるのに出てきてくれないの……」


 そして、呼び出したくせにどういうことだ。
 そんなことを思っていたら、中から女性が出てきた。


「……え?」

「いらっしゃいアイくん」

「……こ、こずえ、さん……」

「ええ。待ってたわ? 入って~」

「い、いや。あのっ……!」

「まあまあアイさん? コズエさんの愛妻料理が食べられるチャンスですよお」

「え。……カオル。とうとう籍入れ」

「入れてないわよ」

「そんな恥ずかしがらなくたってイイのにぃ~」

「……まあアイさん。立ち話でもなんですから、中に入って腹拵えしましょう」

「え。……ちょ、ちょっと待ってよ。このメンバーって……ていうか、え? なんでレンは、そっち側なの」

「そっちってどういうことですか。私は、コズエさんがタダ飯を食べさせてくれるって言うから、あんなとこに帰るよりはいいかと思って来ただけです」

「い、……いつになく饒舌だね」

「まあアイ、こっち来て座りなよ。雨宮先生のご飯、まあ食べられないことないからさ」


 ………………?


「え」

「ん? どうしたの?」

「……いやいや。え。なんで!? ええ……!? なんで九条日向くんがここにいるの!?」

「何でって言われても……ねえ? 道明寺藍?」

「……!! ……いや。いやいやいや。不味い不味い不味い……」

「え。……どうしよう。アイの顔真っ青なんだけど」


 帰ろうとする俺を、カオルとコズエさんが抑えてくる。


「ヤバいって! なんで平然としてんの!? レンやコズエさんはまだいいとしても! カオルはダメでしょ!」

「えー? 勝手に彼女に接触して、デートまでしたアイさんに言われたくないんですけどおー」

「うぐっ。バレてる……」

「アイさん。取り敢えず座ってください。ちゃんと説明しますから」

「……なんかおかしいと思ったんだよ。最近レンが普通に報告してるし。レンから俺に連絡が来るなんて……」

「なんですか。嫌われてると思ってたんですか」

「ううん。恋敵だと思われてると」

「…………」