「(……どういう、こと……)」
いや。そう言われて、納得してる自分もいる。
「何せ、この婚姻は『娘が是非に』と言っていたんだからな」
『娘』というのは、アオイのことで。
「娘は君以外考えられないそうだ」
アオイは、アキくんが好きで。
「どうしても君がいいと言ってきたんだからね」
荒療治で、アキくんのことを好きにさせようとして。
「私はそんな娘の願いを叶えてやりたいんだがね」
それを誕生日に頼んだら、家に連れてこられた本当の理由を知った。
「(アオイは、自分が好きだからアキくんを選んだんじゃない。自分が気になった相手なら、あいつも好きになるんじゃないかと思った。誰かを好いたら、あおいの中で何かが変わるんじゃないかと思ったんだ)」
それは、似ているようで全く違うことだ。
「(そして、誕生日プレゼントにアキくんと結婚を取り付けるよう、アオイは父親にお願いした)」
その時はまだ、……やさしい父親だったから。
「(でも、それを取り付ける代わりに、家に道具として扱われるようになり、家にすべてを強要されてきた……)」
でも、もうやめるなんて言えなかった。断れる状況ではなく、あいつと花咲家の人たちを人質に取られた。
「(……ちょっと待って。シランさんが言ってたよね)」
『……ちょっとね。いろいろあるんだよ』
「(電話でそう言っていたのは、このことなんじゃないの)」
だって、アキくんでさえ知らなかったんだ。そうなったら恐らくカエデさんもだ。このことを、シランさんは言えなかったんだ。
「(アキくんを誘拐しようとしたのは、なかなか縁談が承諾されなかったから。ただ単に、皇を陥れようとしただけじゃない。根本はきっとそれだ)」
サクラさんはそのせいで植物状態。シランさんも情緒不安定になって、あれの犠牲者に。シントさんは、それが嫌で逃げ出した。
「(……シランさん。目をつけられたって、このことだったんですね)」
それを拒否してきたって。……恐らく縁談だろう。道明寺となんて、結びたくない縁談だ。
でも、もう結ばざるをえなかった。自分たちをこんな状況に陥れた道明寺の要望をはね除ければ、また大事な人たちが危ない目に遭うから。
「(……まだ隠し事してたの、あいつ)」
アオイは、このことをオレに黙ってた。きっと隠していたのは、アオイが目をつけたって言ってた相手がアキくんだったからだ。
「(もう、幻滅なんてするわけないじゃん)」
言いたくなかったんだろう。言えなかったんだろう。自分の好きな相手を、無理矢理自分のものにしようとしたと思われるのが。勘違いされるのが。
「(しないって、そんなこと)」
このことを嫌がったから、オレとの連絡を絶っていたのかも知れないな。



