その後猛ダッシュでキサが飲み物を買ってきてくれて落ち着いたので、再び尾行を開始。
どうやら記念に二人で何かを作ったらしい。その小さな小さな小瓶の中に、自分たちも入れてくれて嬉しかった。
『アイくんは何を入れたんですか?』
『俺ですか?』
アイが何を入れたのかはわからなかったから、耳を澄ませる。
『俺は、赤と緑のストーンを入れました。クリスマスっぽいかなって』
『……ははっ。そうですね』
「(赤と緑、ね……)」
確かにクリスマスだろうけれど、やっぱりあいつは何か考えてるように思える。
『……あれ? その鍵は……』
『これですか? なんだかいいなと思ったので』
『……黒……』
『お嫌いですか? 俺は結構好きな色なんですけど……』
「(赤と緑が混じった、その時は……)」
あいつは、【黒い花】を咲かすだろう。そうはなりたくないから、あおいも、それにアオイだって何とかしようと必死なんだ。それが、その三つが揃っていたら、いやでも考えてしまう。
自分の。……信じられないような、残酷な運命を。
『う~ん。見える、かなあ……』
『どうしたんですか?』
何やらアイが小さな小瓶を振っているようだ。
『……あ。見えた。あおいさん、これ見えます?』
『え? …………あ』
『俺がこれを選んだのは、ただ黒かったからじゃなくて。ここに、何でか知らないんですけど、白い小さな点があったからなんです』
『………………』
『あおいさん。俺はね、黒に勝つのは白しかないんじゃないかなって思うんですよ』
『……白?』
『はい。それがたとえほんの小さな小さな点だとしても、きっとこの白い点が、何とかしちゃうんじゃないかなって』
『……な、なんとか……?』
『はい。何というか、黒って悪者な感じじゃないですか。こう、感情で言ったら憎しみとか苦しみとか。そんなものをこの白がやっつけてくれるんじゃないかな? って思うんですよ』
『アイくん……』
『この白は俺の希望です。縋る勇気は出ないけれど、なんとかしてくれるって。そう俺は願ってる。……ううん。もう、願うことしか俺にはきっとできない』
『……きっと、大丈夫です』
『あおいさん……』
『アイくんが何に苦しんでるのかはわかりません。でも、わたしもその白い点になってあげます。だから、……願うんじゃなくて、アイくんも信じましょう?』
『……信じる?』
『はい。きっと、その白が助けてくれるんだって。そう信じましょう』
『……うん。そうだねっ』
「(アイ……)」
アイの中ではもう、先の未来が暗闇に包まれてしまうと、そう思っているんだ。それでも諦めきれなくて、何かに縋りたいけれど、それすらもできない。
「(……縋らせてやろうじゃん)」
でもオレ、扱いは酷いからね。アイにももちろん協力してもらうよ。
それはもう、一緒に命をかけてもらうくらい。……ね?



