「(……うっわ。バレてるし)」


 みんなで変装してあいつをつけることになったけど。


「(どこでバレたんだよ。まさか最初からなんてことは……)」


 あいつに言えて嫌われてもいい覚悟ができたオレは、イヤホンで二人の会話を堂々と盗聴していた。


「(にしても、あいつもこっちに引き入れないといけないから……)」


 しかもアイにはあんまり接触できていない。カオルには全然してなかったけど、あれは先生のおかげだし。


「(でも、ここ最近アオイの電話朝方まで待ってたりするから寝られてない)」


 それにこの電車の揺れがちょうどいい感じに眠気を誘って、ツバサにもたれ掛かっていつの間にかほんとに眠ってしまった。


「(アイはあいつが好きだけど、そういうこと自体はあんまりしてないみたいだし)」


 実際のところ、文化祭の時と、誰も出られない時の監視だけだったみたいだ。


「(レンも、それぐらいだったらよかったのにね)」


 まだそれならレンの心の傷も軽かったのかもしれない。学校が一緒だからという理由だけで、レンはあの二人以上にあいつのことを思いながら傷つけて、苦しい目に遭ってたんだ。


「(早く、みんなを助けてあげないと……)」


 それは、今デートを楽しんでいるアイもだ。


「(……さて、どうしたものか)」


 と考えている間に、夢の国に到着。


「(あいつも、それにアイも、学生証は持って来てないか)」


 あおいの場合は、使って割引なんかしたくないからだろう。アイは、……自分の正体がバレたら不味いもんな。


「うえー。マジで吐きそう……」


 人にも酔うし乗り物にも酔うし、寝てもないし朝ご飯なんかコーヒーしか入ってないのに。一体何が出てくるんだ。


「……大丈夫?」

「無理。オレ離脱したい……」


 離脱したって、あいつらの会話は聞こえるし。


「いや、でもね。ここであんた一人になったら、女性たちの餌食になるよ?」


 そう言いながら視線をずらすキサの視線を追いかけると、目がキラキラ……いや、ギラギラした女の人がわんさか。


「……それはいや」

「でしょ? 多分みんな目をつけられてるんだけど、あたしがいるからまだ平気みたい」


 その代わり、キサには殺気か嫉妬のような視線が向けられてるけど。


「だから頑張って日向! 夕食はパーティーの豪華で美味しい料理が待ってるから!」

「ちょ。……今ご飯の話とか、おえ……」

「す、すまん……」