それから翌日。あいつにツバサとどうだったのか聞こうとしたけど、なんかめっちゃ怒ってたから聞けなかった。


「……行けキサ。君に決めた」

「……ポ〇モンかよ」


 でも、キサ自身も自分しかいないと思っていたらしく、ちゃんと聞けることは聞いてくれた。
 それからキサのおかげであいつのデートのことも聞けたけど、どうやらお礼としてデートをするみたいだった。


「(ほんと。こいつの将来心配過ぎるんだけど)」


 誰かと付き合ってたとしても、お礼にデートを持ちかけられたら断れるだろうか。


「も、もしかして、その人とのデートすること自体は、嫌じゃなかったり……?」


 しかもなんかデートを楽しみにしてるみたいで、みんなのイライラが募っていく。


「で、でも、別にその方が好きとかじゃないですよ?」


 でもあいつが、オレらよりも仲が良くて、大事で、大切で、大好きな奴なんかいないとか言っただけで機嫌がよくなったりもする。アップダウンが激しすぎなんだよなあいちいち。


 しかし、当のあおいの心の中では。


「(だ、だってわたしが好きなのはヒナタくんだし。でも、アイくんは若干気が合うところがあるから、できればお友達になってみたいなー。なんて……)」


 お友達作り計画が立てられていたりするのだけれど。


「(でも、未だにグイグイ来られるとそういうことに慣れてないから動揺しちゃうんだよね。頑張って免疫つけないと)」


 赤面症は、まだ当分抑えられる自信がないと思っていた。

 そして翌日。家を朝早くに出たあおいはというと……。


「(え。チカくんとオウリくんがいるんですけど……)」


 バレてないと思ってるのか、ピンクとブラウンの頭がちらり。


「(そうだよねー。みんな来るんだろうねー)」


 アイに申し訳ないなと思いながら駅に着くと、案の定一瞬みんなが見えてしまった。


「(な、何事もないことを祈る……)」


 せっかくお礼をするのに、何かあったら大変だし。……でも。


「……あの、アイくん」

「ん? ……どうしたんですか?」


 黙っておくのも気が引ける。電車に乗ってから、あおいはアイへ素直に話すことにした。


「……あの、申し訳ないんですけど、付いて来ちゃったみたいなんです」

「え?」

「わたしの大切なお友達が一緒に来てるみたいで。もし邪魔をしてしまったらごめんなさい」

「……ううん。全然大丈夫だよ。せっかくですし、一緒に回りますか?」

「いいえ。わたしはアイくんとデートに来たので。もしよければ気が付かない振りしてあげてください」

「……やさしいね、あおいさんは」

「え?」

「ううん。なんでもない。……そうだね。せっかくの二人きりのデートだし。楽しまないとね?」

「ははっ。……はい。改めてよろしくお願いします」

「ご丁寧にどうも。こちらこそ、よろしくお願いします」


 やさしいアイは、そう言ってくれた。
 でも、やっぱりみんながいると思うと、どこか安心する自分もいたんだ。