「(いやオレ、本当の告白はするつもりなかったから……!)」
あいつがかわいいのが悪い。全部全部。あいつが悪い!
ばかばかばかー。と思いながら、英語教室へと帰ってきた。
「……あおいはさ、半錠効かなかったよ?」
いや効いたんだけど、めっちゃ踏ん張ってたよ?
「それにも関わらず、未だにこいつは爆睡。体力もなければ根性もないのかコラ!」
ボコッと、レンの横っ腹を蹴る。
「~~……っ。……な、なに……?」
「何? じゃないよレン。さっさと起きて」
「え? ……こ、ここはどこだ」
「英語教室」
「英語教室……?」
「うん。ここで待ち合わせだったじゃん」
「……!? 九条! もしかして薬を使ったのか!?」
「え。うん。そうだよ?」
「――……!! おま、何を消した……!!」
「オレとレンが話してる時にさ、あいつがここまで来たんだよ」
「え」
「それで、レンはピンピンしてるわ、オレもいるわで、あいつパニックになってさ」
「………………」
「使っちゃえーと思って?」
「馬鹿野郎……!!」
「ぐえっ」
「それならあれか? 計画は失敗か?」
「いや、本人忘れてるはずだから大丈夫でしょ」
「そ、……そうか」
「(……よかった。単純で)」
「でもなんか、九条の顔を見ると殴りたくなるんだが」
「え。酷い。主なのに」
「まあ、それはずっと前から思ってたからしょうがないか」
「(そうだったんだ……)」
「それで? あおいさんは?」
「ん? 保健室運んだ。ちゃんとカードも換えておいたから大丈夫」
「え。オレは?」
「男なんか運ぶ趣味ない。はい、これはレンの分ね。あと、クラシックの曲スマホに送っといたから入れとくといいよ。一曲ぐらいは踊れるだろうし、せっかくペアなんだから踊ってあげて」
単純なレンに、オレは変なことが書かれてない無地のカードを渡した。
「だから、レンが倒れてたあいつを保健室まで運んだってことにしておいてね」
「そうだな。わかった」
「ほら早く行っておいで? 王子様?」
「…………」
「ん? 嫌だった? だったらレン王子にする?」
「どっちも断る! ……九条。お前、プレゼント持って来てるか」
「え? まあ、一応は」
最初から渡すつもりなんてなかったけど。でも、もしものことがあったら……と思って用意はしてきた。
「寄越せ。それ渡してきてやる」
「え」
そう言ってレンは、オレの手の中から綺麗に包装されたプレゼントを抜き去る。
「ちょ、……レン。何言ってるの」
「どうせあおいさんのこと考えながら選んだんだろ。オレは最初から持って来てない。お前のを渡そうと思ってたからな」
「……れ、ん……」
「これぐらいしかできないけど。お前も、ちゃんと向き合えよ」
そう言って、英語教室から出て行った。
「……なに。それ……」
なんで。……バレてんだよ。
「言ってないじゃん。レンに、オレは参加しないなんて……」
なのに。なんで知ってるんだよ。
「あー。……はっず」
何が恥ずかしいかって? そんなの中身見られるからだよ。
「レンのバカ」
体力ないくせに。
「バカ」
根性だってないくせに。
「……。ばか」
単純なくせに。
「…………ありがと」
オレの気持ち。わかってくれるんだよ。



