「……ひなたくんが。……るにちゃん?」


 あの、写真の後ろ姿の違和感が、確証に変わる。

 たくさん写真は持っている。でも、彼がルニだと気が付かなかったのは、双子の姉の写真を見ても思わなかったのは、手元に持ってる写真は彼が……ううん。彼女が小学校にも入学してなかったからだ。
 小さいものが好きにもほどがあった。もうちょっと上の、小学校低学年だったらわかったかもしれない。

 でも、そんなことを考えてても、薬を吹き掛けられて立っていられなくなる。
 保健室へと運んでくれるやさしい振動が心地よくて、見下ろしてくる彼のやさしい瞳に、鼓動が早くなって。触れ合ってるところから伝わる彼の体温が。あったかいのに。それが熱に変わる。

 ……あれから。ずっとおかしいんだ。彼を、看病して以来ずっと……。
 彼を見るだけで、嬉しくなった。話せたら。もっと。触れられたら。熱くなって。目が合えば。胸がきゅってなる。


 あれから何でか、彼のことを目で追うようになって。彼のことを、盗み見るようになって。彼がキサと一緒にいる時、胸が苦しくなった。はじめはキサを取られた感じなんだろうなと。そう、……思っていて。
 でも、彼がキサと話す度。キサに触れる度。触れられる度に。楽しそうに。自分にはしてくれない笑顔になる度。胸の中が、もやもやした。


「……オレが、絶対にハナを助けてあげる」


 ああ。彼はわかってくれたんだと思った。すごく、嬉しかった。
 ……でも。この気持ちは。彼が、ルニだからじゃ。……ない。


「……ハナ? 犠牲じゃ、幸せになれないって言ったでしょ」


 なんで彼が、そんなことを言うのか。……知ってるのかなって思った。
 ……でも、わたしは。彼が。ヒナタくんが。怪盗さんだったから……じゃ。ない。……っ。



「……っ。は、なっ……」


 ――いつから。だったんだろう。


「……。は、なっ」


 看病した時から……? 間違いではないだろう。


「……きいて。はな」


 だって。それから異常に意識したんだ。


「今までのこと。……忘れる、から……」


 心配で、修行になんて。ならなくて。


「…………すき。なんだ」


 ……声を。聞くだけで安心して。


「ずっとまえから。……すきだったんだっ」


 笑ってくれるだけで。心臓が暴れて……。


「なんでここまでするのかって……?」


 ……触れるだけで。熱く。なって……。


「ぜんぶ。……はなのためにきまってるじゃんっ」


 ……嬉しかったんだ。
 わたしのこと。ちゃんとわかってくれてて。