窓の外に映る、闇夜に浮いた月を見ていた彼の瞳からは、雫が零れていた。


「オレは、……レンしかいないと思ったんだ」

「……王子だから?」

「うん。そう」

「……九条。お前が何を計画して、何をしようとしてるかはわからないが、お前のおかげであおいさんの心をもらったって、オレはちっとも嬉しくない」

「……ま、そうだろうね」

「オレは、あおいさんに好いてもらえるほどできた人間じゃない。オレはあおいさんが好きだ。でもな、彼女の気持ちは人に操作できるわけじゃない。そんなの幸せなんかじゃない。オレは、オレの力であおいさんの気持ちが欲しいと思ってる。九条の手なんか借りずにだ」

「………………」

「王子はお前がやるべきだ。オレはしない。お前もしないというなら、悪いが他を当たってくれ」

「………………」

「話の続きは終わりか? このままでいいのか? あおいさんは?」

「……そっか。やっぱり無理な話だったよね」

「九条……」

「ううん。いいんだ。わかってた。でも、レンにはちゃんと言っておかないとと思ったんだ」

「……そうか」

「うん。だから、聞いてくれてありがとう。悪かったね、王子なんか頼んで」

「……いいや。お前が考えを改めてくれたんならそれでいいんだ」

「ありがとうレン。……これ、レンにあげるよ」

「え? この写真を?」


 そう言ってこいつは、目の前にぐいーっ! とさっきの写真を突き付けてくる。


「ちゃんと見てあげて? あの頃のこいつ。泣いてるこいつ」

「……ああ」


 渡されて、それを見続けた。よくわからないが、だんだん彼女に見えてこなくもない。


「レ~ン」

「ん? なんだ――」