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「……は?」

「よくあるじゃん? 童話なんかでさ、『お姫様は助けてくれた王子様に恋に落ちました』てな感じで」

「……おい、九条」

「オレは、レンにあいつを助けてもらって、そのままあいつと幸せになってもらいたいんだ」

「九条」

「言ったでしょ? レンは王子様なんだって。言ったでしょ? オレはあいつを幸せにしてやりたいんだって」

「九条。それは」

「きっとレンにあいつは恋に落ちるよ。そうするようにオレがいろいろしたからね。計画は完璧」

「選ぶのはあおいさんだろう」

「そうだろうけど、多分あいつはレンを選ぶよ」

「……どういうことだ」

「レンもあいつのこと好きでしょ? 大切でしょ? ……よかった。これで安心して、レンにあいつのことを任せられる」

「九条だってあおいさんが好きだろう……!」

「……そうだね」

「なんでそんなことをしようとする!? 人の幸せは、お前が決めるものじゃない!」

「決めることはできないかもしれないけど、ある程度ならいじることだってできるんだよ」

「……何、言って……」

「オレはね、大切なんだ。あいつが。大事なんだよ、これ以上ないほど。それはね、本当に異常なくらいだ。あいつのためを思ってなら、……どんな罪だって背負えるくらい」

「……何をした」

「ほんと、オレ以上最低な人はこの世にいないんじゃないかな。大切な人に、こんなことするなんてね」

「九条。何をしたんだ」

「ん? ……何って、あいつを助けるためにいろんな人を扱き使ってる」

「それは、あおいさんを助けるために必要なことだろう?」

「必要だとしても、していいこととダメなことがあるでしょ」

「……九条。それを言われたらオレは、王子なんて引き受けられない」

「…………」

「別に、たくさんの人に協力を得ることが悪いことじゃない。確かに、お前の場合は扱いが酷い時はある。でも、それは全部お前もわかってるだろう?」

「そうだね。わかってないと、使おうなんて思わないでしょ。普通は」

「……九条。オレは、王子にはなれない。でもオレは、あおいさんを助けることはやめない。協力はする」

「…………」

「王子以外ならなんでも引き受けよう。……九条。王子になるべきはお前だ」

「はっ」

「オレだって、あおいさんのためにたくさんの罪を背負ってきた。オレだって、王子には向いていない」

「……そっか」

「くじょう……?」