すべてはあの花のために❾


「それでは皆様、大変長らくお待たせ致しました。プレゼント交換のお時間でございます。入場時に引いていただきました、クリスマスカードをご用意くださいませ」


 カナのアナウンスとともに、ペアが見つかってない奴らが一気にオレらの方へ駆け出してきた。


「(いやいや、これは計算外なんだけどっ……!?)」


 取り敢えずはみんなで必死に逃げた。
 落ち着いた頃に出たらいいだろう。オレが思うんだ、あいつも思ってるに違いない。

 逃げ込んだ先はステージ裏のカーテンの中。完璧だ。


「「「「ひなたくーん!」」」」

「――!?!?」


 声は聞こえたけど、見つかったわけではなかった。


「(あー。……焦ったし)」


 誰もいなくなったのを確認して、レンに連絡を取る。


『はい。どうかされたんですか?』

「え。どうしてオレにそんな口調なの?」

『え! そうなんですか! それは大変だ!』

「……わかった。レンも女子たちに追われてるんだね」

『わかりました。すぐにそちらへ向かいますね』

「(あ。遠くでレンが謝ってる声が聞こえる)」


 しばらくお待ちください。


『……悪い。やっと逃げられた』

「お疲れ様」

『九条もだろう?』

「そうそう。今カーテンの中にいる」

『か、カーテン……?』

「まあそれはさておいて。いいよ、行ってくれて」

『それはいいんだが、あおいさんの姿が見当たらないんだ』

「え? 赤いドレ――『だーかーらー!! オレのはそれじゃねえって言ってんだろ!!』『『『待ってーチカゼくうーん』』』……赤いドレスだから、すぐに見つかると思うけど」

『そうだよな。オレも赤を目印に捜しているんだが……』

「もしかしたら、オレみたいにカーテンの中に隠れてるかも」

『それはないと断言できる』

「えー。なんでー」

『まあ、お前みたいに隠れてる可能性はあるかもな』

「合ってるじゃん」

『カーテンは関係ないと思うだけだ。……それならもう少し捜してみるよ』

「うん。タイミングは任せてね」

『そうは言っても、本当に大丈夫なのか?』

「うんうん。耳を澄ませておくからねー」

『……まあ任せる。それじゃああとで』

「はーい」


 それから次は、もう一人の人に連絡をする。


『はい。何』

「え……。誰の真似ですか」

『え。誰だと言われても』

「そうですか、オレですか」

『さすが』

「読者さん、ぱっと見分かりませんよ?」

『そんなことを言われても』

「まあいいや。……ペアは見つかりました?」

『うん。先程からアタックされてる』

「え。だ、大丈夫ですか?」

『これはこれで楽しい』

「そ、そうですか」

『……そろそろ?』

「はい。なので心構えを――『捕まえた~』『『よくやったわ柔ちゃん!!』』『おーろーせえー!!』……しておいてください」

『すごい。頭上で回されてるよ、ちかぜくん』

「喜んでるんで、放っておいて大丈夫です」

『でもそっか。わかった。それじゃあ、えりなちゃんとえりかちゃんとえりこちゃん待たせてるから』

「え。……な、なんで三人??」

『ペアよりオレの方がイケメンだって』

「そ、そうですか」

『頑張って』

「……ありがとうございます。失礼します」


 ナズナさんも、なんだかんだで楽しんでるみたいだ。


「息子としては、複雑かもね」


 ごめんアカネと心で謝って、スマホのアプリを起動する。


「(さて。あおいちゃんは今どこですかねー)」


 耳を澄ませ、ブレーカーを落とすタイミングを計った。