すべてはあの花のために❾


 ……なのに。


「え。……な、んで……」


 女子のボックスに残っていたカードは、オレが今、手元に持っているものと全く同じもので。


「……は。ははは……」


 何分の一の確率か。これはもう、奇跡に近い。


「……持ってるなあ、オレ」


 今回は、あいつにオレがルニだってことを言うだけのつもりだった。


「言おうと思ったのは、オレが口に出して、もうこれで終わりにしたかったからだ」


 あいつが忘れることになろうと、ちゃんとオレの口から言っておきたいって。そう思ったから。


「それから。あいつがもし、どうしてオレがこんなことをしているのか聞いてきたら……」


 言って、あげたかったんだ。ちゃんと知ってるから。全部ちゃんと知ってるからこそ、あんたを助けたいんだって。


「レンが……王子様がきっと迎えに行くから、それまでは無理はしないでねって」


 でも。……何これ。


「……こんな奇跡。ほんとにあるなんて……」


 そう思ったら、もしかしたらあいつが、オレを選んでくれることがあるのかもしれないなんて。そんな、夢のようなことが、頭を掠める。


「……ま、そんなことがあったとしても、オレは自分の気持ちを言うつもりはない」


 この時はそう思ってたのに。
 あいつを前にしたら、何もかもぶっ飛んで。想いを、伝えてしまうなんて……。

 この時はまだ、本当に言うつもりなんてなかったんだ。



「……あれが、最初で最後だったな……」


 ダンスなんて、誰がそんな恥ずかしいものをしたいのか。でも相手によって、それは変わるんだなって思った。


「あーあ。計画変更しよっかなー」


 と言っても、もういろんな人も一緒に動いてるから、今更変えられっこない。


「はあ。……やりますか」


 引いたカードの代わりに、オレはレンが相手のカードを入れた。


「オレも強運、持ってるじゃん」


 キサには負けるかもしれないけど。それでも、オレは勝ってみせる。


「あの家に、あいつを渡してなんかやらないよ」


 コンとボックスを軽く叩き、オレは会場へと戻った。