「おーすごい。どうしてわかったの？」
どうやらキサにオレが仕掛けたことがバレてしまったらしい。
「たまたまよ。ステージ裏からあんたが出てきたのが見えたの」
「ああ、だからさっき庇ってくれたんだ」
「あっちゃんを、どうするつもり」
「どうも？ あいつをいじめるのがオレの仕事だし」
「ごめんけど、これ以上あっちゃんにあんなことするなら、あたしにだって考えがある」
「あんなこと？ 例えば？」
「た、たとえば……」
「大丈夫だよ、キサ。オレは絶対に、あいつを『枯らす』ような真似はしないから」
「――!! あ、んた。……知ってるの？」
「うん知ってる。キサにはもう言っておくけど、オレは、絶対にあいつを枯らすようなことはしない」
「……じゃあ、今回のは何だったの」
「別に、あいつを枯らしたいからしたわけじゃない。これは信じて欲しい」
「……まあ、あんたあっちゃん大好きだし、何かわけがあるんだろうなって思ってるけど」
「これにはわけがあるんだ。オレはきっと、これからあいつに嫌われるようなことをしていくことになると思う」
「日向……？」
「どうしても必要なことなんだ。あいつは少し大変になっちゃうかもしれないけど、それでもしなければならないこと」
「…………」
「だから、お願いキサ。これは黙ってて欲しい。キサだって、あいつのこと心配でしょ？」
「そりゃ。……心配に決まってる！」
「オレがしてるのは、あいつを助けるために必要なことなんだ。絶対だよ。だから、……どうか信じて。オレが何かをしても、見て見ぬ振りをして欲しい。誰にも、言わないで欲しいんだ」
「……はあ。本当にそれで、あっちゃんが助けられるの？」
「いいや？」
「はあ!?」
「オレには、あいつ以外にも助けたい奴がいるんだよ。あいつだけ助けたんじゃ意味がない。……だからあいつ、ちょっと大変だと思うんだ。だからキサは、あいつのこと支えてやって？」
「……な、に。それ。あんた、あっちゃんに嫌われてもいいってこと……!?」
「嫌われるのは嫌だけど。でも、しなくちゃいけないからね」
「ど、どうにか違う方法は……」
「残念だけどないよ。これ以外に。……だからキサ？ 誰にも言わないで。あいつのこと、頼んだよ」
そう言って、仮眠室から出た。
「……なんで。あんたはいっつも。そんなことばっかりなんだ……」
でも、どうすることもできない。
彼女に言ってしまっては、傷つくのはヒナタだ。それに、ヒナタが助けようとしている人だ。
「……不器用男のフォローを、しっかりするしかないじゃない……ッ！」
そのあとすぐ、キサも続けて仮眠室を出たら葵と目が合った気がした。
「それじゃあ！ また明日ねー！」
そう言った葵の顔は、いつもみたいに笑顔だったけど。
「（……あっちゃん今。すごく寂しそうな顔してた……）」
どうしてそんな顔をしていたのかは、キサにはわからなかった。
