屋根を開ける前に、アキくんに声を掛けてくる。
「アキくん。今がチャンスだと思うよ」
「? ……何が?」
「何がって。アキくん、あいつとずっとこのままでいいの?」
「でも、俺は葵の近くにも寄れないし、話もさせてくれない」
「本当に?」
「え?」
「だってあいつ、いっつもアキくんに申し訳なさそうな顔してるよ? あいつだって、話したいけど勇気が出ないんだ」
「…………」
「ここは、アキくんが勇気を出して踏み込んでいくしかないと思うんだけど」
「俺は……」
「しつこいぐらいがちょうどいいと思う。だって、あいつアキくんが嫌いになったわけじゃないもん」
「…………」
「あいつがオレらのこと嫌うわけないよ。だって初めてできた友達だし。大切で、でも喧嘩しちゃって、どうやって仲直りしたらいいかわかんないんじゃない?」
「……仲直り、か……」
「うん。だから、ここはアキくんが動いてあげるしかないと思う」
「……そうだな。まだやっぱり怖いけど。でも、このままなのは嫌だから」
「うんうん。きっとキサなら気を利かせてくれると思うから、今からアキくん上に上がってあいつと話してきなよ」
「ああ。……ありがとう日向。行ってくる」
「いってらっしゃーい」
オレはアキくんを見送って、初めての仕事をした。
「(ま。頑張ってねー。……大丈夫だよ、あおいなら)」
ステージ裏に入って、屋根の『開』ボタンを押す。
「(ここにいたら不味いから……)」
『閉』ボタンは、きっと急いで誰かが止めに行くだろう。オレは早く元の位置に戻らないと。
「(おお……。アキくん頑張ってる。いいぞー)」
表情は至って心配している風を装っているけれど、心の中ではこんな感じ。
「(ていうかあの体勢逆にキツくない? 早くネットに降り立った方がいいと思うんだけど……)」
そうしたら誰かが気づいて、急いで屋根のスイッチを押しに行ったのか屋根がどんどん閉まっていた。
「(ま、初めてにしてはこんなもんかなー)」
そう思ってアキくんたちを見たら、あいつが中途半端に宙づりになっていて一番痛そうだった。
「(ごめん。そこはオレ担当じゃなくてオウリだから。文句はあいつに言ってね)」
ま、手紙にも気が付いてくれたし。一件落着っと。
それから、そんなことがあったから作業は目標までは届かなかったけど、まあ予定範囲内までは終えられた。そのあと、どうしてこんなことが起こってしまったのかの反省会をした。
「ここのことを、よく知ってるってこと?」
ま、オレだしね。よーく知ってるよ。
反省会が終わって、あいつがアキくんと何か話している時。
「……ちょっといい」
「……? いいけど」
キサに呼ばれて、二人して仮眠室の方へ移動した。
「あんた、どういうつもり」
「え? 何が?」
「あんたでしょ。屋根開けたの」



