驚きすぎて、レンは言葉が出ないみたいだ。


「説明説明って言っても、何を話したらいいか。……取り敢えず、オレは棋士って言われてる。たくさんの駒を動かしてる」

「説明になってない」

「そう? でももう、その駒にレンも会ってるはずだよ?」


 レンが知ってるのは誰だろうな。……雨宮先生でしょ、それからカオル。理事長に、あとつけてきてたんならユズもわかるかな? 他にもたくさんいるけどね。彼らを動かしてる大本はオレ。


「OK?」

「……全、然……」

「パニックだねえ」

「どうして……え? 何で九条が、あおいさんを助けようなんて……ていうか。なんで知って」

「なんで知ってるか、か……」

「……そうだ。確かにあおいさんの関係者だろうけど、知りすぎてる」

「まあ、多分今あいつのこと一番知ってるのはオレだろうからね」

「……どうして知ってるんだ。いつ知った」

「話したら、王子になってくれる?」

「それは。……よくわからないが、考慮する」

「そっか。じゃあ……レンは、あいつと昔仲良くなった女の子を知ってる?」

「え。ああ。でもその子は、あの家によって消され」

「じゃあもしその少女が生きていたとしたら?」

「え」

「ついでに言うと、女の子じゃなかったら」

「っ、え?」

「むかしむかし、あるところに」

「は?」

「綺麗な花畑で、泣いている少女がいました」

「く、九条……?」


 その少女の涙を止めたかったある少年は、いつも明るくて陽気な双子の姉の姿を借りることにしました。勇気を出して声を掛けた少年は、その少女と仲良くなりました。

 でもある日、その双子の姉が消えてしまいました。


「ま、姉貴がオレのこと庇って死んだんだけどね。そっくりだったから、家もどっちがオレかなんてわからなかったんだと思うよ」

「……九、条……」

「あーあ。この話するの結構しんどいんだって」

「わ、悪い」


 やっぱり思い出すとつらくて、机に突っ伏す。


「……それからいろいろあったけど、今の話をしたのはレンが初めて」

「え」

「それだけオレには、レンが必要だってこと。……OK?」

「……取り敢えず、お前はそれでも本気なんだということだけはわかった」

「それでもって酷いな……」

「だったら日頃から気をつけろ」


 て言っても、これがオレだし。気をつけるも何も……ねえ。


「レンには、課題をしてもらう以外に」

「やっぱりそれはするんだな……」

「なんとかして、あの家からあいつの『名字』の情報を掴んで欲しい」

「……!! お前、それも知って……」

「だから全部知ってるんだって」