「言ってる意味がわからない」

「だから、王子をやってくれって言ってんの。これもわからないとか、勉強やり直さないと」

「お前は説明が足りない! ちゃんと話をしてくれ!」

「あ。レンが怒鳴った」


 こいつも、本当にこのことがバレたくないみたいで必死だ。ちょっと笑える。


「説明……か。いろんな人に言わないよう言わないよう説明してきたから、正直ページ数の無駄なんだよね」

「いや、言ってる意味が……」

「さっきからそればっかりだね」

「こういうやりとりが無駄だと私は思うけどな」

「それもそっか。それじゃあ話をしよう」

「……やっとか」


 さっさと席に着くと、レンが目の前に座る。


「さっき協力して欲しいって言ったのは、ある奴を幸せにするための協力」

「……ある奴?」

「そう。そいつをあるところから助け出してやって欲しいんだ。それをレンに頼みたい」

「……私に?」

「そうそう。オレは絶対レンが適任だと思うんだ。だって王子だし」

「いや、王子はどこから……」

「前言ったじゃん。女子たちが、王子様みたいだってレンのこと言ってたって」

「それは、……ない」

「なんで?」

「私なんかが王子になれるわけないからだ」

「……囚われてるから?」

「え……」


 オレはレンの前で、手紙を二本の指で挟んでちらつかせる。


「そこから逃げられないから」

「……く、じょう……?」

「逃げたくても、足枷があるから」

「……一体、どういう……」

「こんなこと、したくないのにさせられる」

「……!! お前は……」


 そう言って、にっこりとレンに笑いかけてやる。


「レン。オレがお前を助けてあげる」

「……くじょう……」


 レンは驚きを隠せなくて、目を見開いたままだ。


「レンには、あいつを助けるために協力をしてもらう」

「……あ、あいつって。まさか……」

「そう。『道明寺葵』と呼ばれる人。あいつを助けるためには、レンが必要なんだ」

「……お前は、一体何者なんだ」

「え? 九条日向。15歳。高1。趣味は隠し撮り」

「……その趣味は変えた方がいい」

「それから、ある時からはあいつを助けるためだけに生きてる」

「――……!」

「ごめんけど、レンのこともちょっと前から知ってた。立ち位置も何もかも」