「……今と大して変わらなくないか」
「あれ? 驚かない……」
頑張って決め台詞考えたのに。つまんなーい。
「あれが決め台詞とか、最低だな」
「おお。お褒めの言葉ありがとー」
「はあ……」
まあ、逃げ出そうものなら地の果てまで追いかけるつもりだったけどね。オレから逃げられると思わない方がいいよ。そもそもレン足遅いし。
「……ま、それだけ証拠を出されたら、言い訳なんて通用しないだろ」
「潔いね」
あの時本当に早く登校したから、これで脅すことにしたんだけどね。これがなくたって、レンを早くなんとかしてやりたいって思ってたんだ。これはただのきっかけに過ぎないよ。
「それで? これがバラされたくなかったら言うこと聞けってことか?」
「うんうん。そんな感じだね」
「また課題写させろとか、そんなことだろ」
「オレの分の課題もしてよ」
「……そんなことでいいなら」
それで黙っていてもらえるならと、言葉を飲み込むレンに、オレは小さく笑った。
「そっか。やっぱりレンはやさしい奴だね」
「は……?」
「やっぱりレンにしてよかった。オレ見る目あるから」
「言ってる意味が、わからないんだが……」
「? 『レンはやさしい』……これの意味がわからないとか、ちゃんと勉強し直した方がいいんじゃない?」
「私はそうは思わないからそう聞いただけだ。気にしないでいい」
「レンはやさしいよ? そこは誇っていい。課題写させてくれるし」
「それだけでやさしいって判断されるのも如何なものか……」
レンが頭を抱えてしまった。
……しょうがないな。オレもこのあとまだ生徒会の仕事があるし、長居はできないから。
「まあ課題もやってもらうとして」
「本気だったのか」
……さあ。レン。君を、オレが助けてあげよう。
「レンにね、協力してもらいたいことがあるんだ」
「……? 私にできることなら……」
そしてオレが、上手に君を動かしてやろう。
「あのね、レンに王子様になって欲しいんだよね」
「……は?」
だってこれが、……オレが考える、あいつの幸せだから。



