『(にしても、あおいさんはどうしてあんな……)』


 きっと眠っているし、先生も帰ってくるだろうから、そのままにしていても大丈夫だと思うけど。保健室を出たオレは、彼女のことを心配しつつも、待たせてる奴がいるのでゆっくりとその教室に向かった。


『(信じられないものって、一体……)』


 確かに、自分が作って貼ったポスターが引き裂かれてるのも信じられないことだろうと思うけど、それはすぐに元通りになっていた。


『(それに今日は金曜日だし。今の今、彼女に何があったというのか)』


 あいつの要望通り、鞄と来週の月曜と言わず火曜日の課題も持って行ってやることに。


『(と言いつつ、わからなかったからあいつに聞こうと思ったんだが……)』


 そうしてオレは、あいつが待つ空き教室へと向かったんだけど。



『あ。レンちゃん、遅かったね』


 レンちゃん(、、、)なんて、今まで言ったことないのに。


『いやあ、あまりにも遅かったからさ? 勘付かれて逃げられちゃったかと思ったよー』


 ……あおいさん。今オレも、信じられないものを見ています。


『あれ。逃げないんだ。あ、まだ自分は無関係だとか、そんな言い訳でも考えてる?』


 こればっかりは信じたくないんですけど。……ああ、そうですね。これは泣きたくもなりますね。


『残念だけど逃がさないよ? だってこれもだけど、こっちにも証拠あるんだから』


 そう言って、にやりと。まるでゲームを愉しんでいるかのように、目の前のこいつは嗤っている。


『ほ~らレンちゃん? よく見て? これと、あとはこの動画ねー?』


 そう言って、オレのことをバカな奴だと。いいおもちゃを見つけたと。
 そういう目で、真っ赤な手紙とオレがポスターを引き裂く動画を見せてくるこいつが……。



「今日からレンちゃんは、オレの下僕だよ? オメデトー」


 ……あおいさん。オレは、悪魔だと思いました。