すべてはあの花のために❾


 それから、どうやってその手紙を貼るか。放課後一人で考えていた。


『……あ……』


 いつまで悩んでいたのか。結構遅くなってしまった。まあ監視してたとでも言えばいいか。まだ彼女が願いを叶えていることや、彼らと友達ということもバレてはいないみたいだし。
 教室でそうしていたら、大きな校舎の方に彼女の姿を見かけた。


『(あれは……ポスター?)』


 見に行こうと思ったら、Sクラスの校舎にも貼ってあった。


『(クリスマスパーティー開催のポスター……)』


 頭の中で算段をつけたオレは、帰ってカオルとアイさんに明日することを告げ、一つの手紙を六つに分けてもらった。


『(きっと校内全ての掲示板に貼ってあるだろう。それだけ、一生懸命にお仕事されてるので)』


 そして翌日。その手紙を持って早朝、オレは学校に登校した。


『(……すみ。ませんっ……)』


 何度、そう心で謝っただろうか。ポスターに手を掛けても、なかなかその手を下に下ろせない。


『(すみません。すみ、ませんっ……)』


 引き裂いた後も、何度謝っただろう。つらかった。もう誰かに、解放してもらいたかった。
 ポスターを引き裂き、その横にカオルとアイさんが準備してくれた手紙を貼り付ける。内容は知らない。クリスマスパーティーのことと、彼女の仮面のことを話して作ってくれたから、そのことに関してきっと、気味が悪いことが書かれているんだろう。


『(……最後の。一つ……)』


 やっぱり彼女は、校舎内の全ての掲示板にポスターを貼っていた。……本当に。真面目で。やさしくて。あったかい人なのに。

 そっと。最後のポスターに手を掛ける。


『(……ポスター。また作ってください。もう。しないので)』


 とっても綺麗に作られているのに。それをオレは、無残にも引き裂くのが仕事だ。


『(こうすることしかできないオレをっ。……どうか。許してっ)』


 一気に引き裂いた後、涙が出そうだった。でも、オレがそれを流すなんて、許されるわけがない。


『(誰か。……っ。助けてくれ)』


 オレはいい。
 だからどうか。
 彼女を。……頼むっ。

 最後の手紙を横に貼り、オレは教室へと戻っていった。