そうしてみんなの部屋の前にチカが、ハナの部屋の前にオレが、見張りとしてつくことになった。


「……くしゅっ」


 吹き抜けだったから、布団を被っててもちょっと寒かった。すると、部屋の中から物音が聞こえた。


「(……もしかして)」


 そう思ってスマホを見たら、時刻は2時だった。


「(……アオイ、かな……)」


 ちらり、チカが少しうとうとしてる時に部屋の中を覗く。


「……アオイ?」

「ん。……ひ、なた……?」


 開けた瞳が赤い。……アオイだ。


「ちょっと待ってて」

「え?」


 アオイは、そっとストーブをこちらに持って来てくれた。


「これで、ちょっとは温かいといいんだけど……」

「……うん。だいぶマシ。ありがとう」

「にしても何してんの? 覗き?」

「失礼な。見張りだよ」


 隙間を少しだけ空けて、中と外で戸に背をつけて話をする。


「見張り? なんの」

「みんなが、ハナの寝顔が見たいってうるさかったから」

「ああ……。それはそれは、ご愁傷様です」

「チカもあっちで一緒に見張りしてくれてる。ちょっとうとうとしてるけど」

「野生児っぽいから、部屋の中で物音がしたらすぐ起きそうだよね」

「確かに」


 アオイとこうやって直接話すのは久し振りだった。いつも電話だったから。


「それで? なんで冷たくなったの?」

「エロの父親と関西弁男がさ、葵の瞳が赤かったことを知ってたんだ」

「えっ」

「ツンデレと女王様と一緒に襲われた時とさっき。その時はわたしが出たから」

「さっき……って。何があったの」

「……倒れた奴らがいたでしょ。あいつらが一気に襲ってきたんだけど、時間もなかったから葵は無理してぶっ飛ばしたんだ」

「はあ……」

「ヒナタのせいじゃないよ? 葵が、倒せたのにわたしを出すようなことをしたんだから」

「うん」

「それで、見られたことがショックだったの。多分、ツンデレも見てるってハッキリわかったから」

「……でも、チカはそんなこと一言も言ってないよね?」

「わかんないけどね。おかしいなとは思ってるかもしれない。それで頭の中で、どうしようどうしよう……って。ぐるぐるいろんなこと必死に考えてたらパニックになって、倒れたの」

「どれだけ必死だったの」

「それだけってことだよ。ま、そのせいでさっきわたしちょっと出ちゃったんだ」

「え? どういうこと?」

「風呂の中でさ、イケメンたちの上半身を見てたんだけどさ」

「いや、言い方……」

「一人さ、美少女がいたのよ」

「え。それってさ」

「そう。美少女かと思ったのにオカマでショックだって言ったら、叩かれて今度はわたしが気絶しちゃった」

「いやいや。その時目は? 大丈夫だったの?」

「薄く開いてただけだから、みんなは見えてなかったと思うよ? 湯煙すごかったし」

「……そっか。わかった」


 今日は、なんか。このまま終わりたい気が。


「ていうか聞いて! 今日ほんと、いろいろありすぎてビックリなんだけど!」

「はいはいー。どうしたのー(あんまり聞きたくないな今日は……)」


 そうなるよねーやっぱり。