すべてはあの花のために❾


 翌朝。アイさんと待ち合わせをして、彼女の監視をした。車で送ってきてもらったようで、駅で彼女たちを発見。


『(じー……)』

『(あ、アイさん……?)』


 運転している、きっと五十嵐組関係者の人と話しているだけで、この嫉妬。半端ないな。


『……あ! あおいさん!』

『えっ。……ちょっと! アイさん……!?』


 彼女がいきなり走り出したと思ったら、アイさんも途轍もないスピードで走り出してしまった。


『……オレ。……そんなに。……体力。……ないんで……』

『レン。女子よりもないのは、流石に不味いと思う』


 全然気まずくないし。逆に苛ついたんだけど。……いいような悪いような。


『またお昼に集合するみたいだからさ? ここで待ってればよくない?』

『目的は隣町みたいです。先に待ち伏せっていう手もありますよ』

『いや! 少しでも長く生のあおいさんを見たい!』

『生って……』


 それからまあ、アイさんがたくさん話しかけてくれたので(※殆ど彼女への愛)会話に困ることはなかったが、やっぱりちょっとイラッとした。


『……レン。俺さ、昨日あおいさんに告白したんだ』

『すみません。今ふざけた言葉が聞こえた気がして。……もう一度ちゃんと言ってくれますか』

『俺ね、昨日あおいさんに告白したんだ』

『ふざけてるんですかあなた』

『ううん。本気』


 至って真剣な眼差しで、オレに視線を合わせてくる。


『たとえ家に縛られていようとも、好きなものは好きなんだ。それに、やることはやってるんだし、それ以外の行動を制限されてるわけじゃない』

『……ですが』

『もうカオルも表だって動かないみたいだし。だから俺は、俺のやりたいようにあおいさんに近づくよ。もちろんみんなに迷惑は掛けない』

『……あなたがそれでいいなら、私は何も言えません』

『いいの、レン』

『いいも何も、迷惑を掛けるつもりはないのでしょう? でしたら危険なことはない。それだけです』

『ううん。そういう意味で言ったんじゃないよ』

『……? どういう意味ですか?』

『確かに迷惑は掛けないって言った。でも、レンの気持ちには迷惑掛けるでしょう?』

『……何を言ってるんですか』

『レン。こういうことに関して、隠し事は無しにしよう』

『……何を』

『もうわかってるから。レンが、どうしてこんなことをし出すようになったのかも』

『……!!』

『レンの気持ちも、ちゃんとわかってる。でも、俺に遠慮するなんてこと、しないで欲しいんだ』

『……遠慮、なんて。ただ。私は……』

『俺はやりたいようにやるよ? あおいさんと少しでも話したいから。たとえ俺自身を偽ったとしても』

『…………』

『だからレンも、やりたいようにしたらいいよ。しかも学校一緒でしょ?! ほんと羨ましい!』

『……本当に。いいんでしょうか』

『ん?』


 だって、そんなことをしたって、していることは変わらない。どうやったってオレは、彼女にとっては最低な奴で……。


『……自分がしたいようにしたらいいんじゃない?』

『……したい、ように……』

『だって、好きって気持ちなんか、誰にも邪魔なんてできないでしょ?』

『…………』

『誰にも文句なんか言わせないよ。俺はあおいさんが好き。だからやりたいようにやる。それだけの話だ』

『……偽って、でも……』

『偽らないと、近づけないからね』

『……。そう、ですね……』


 こんな最低な奴だってこと、知らなければいい。……知らないで。欲しい。