『……レンくん。本当にいいんですかあ?』
『そうすれば、またしばらくは大丈夫でしょう』
それから、桜を突く程度じゃダメなんだという結論に至り、オレらは彼女に接触をすることにした。一度接触をすれば、彼女を傷つければ。彼女をまた、しばらくは守ってあげられる。
『体育祭があります。お二人が監視をするならそこかと』
『……そう、だね……』
でも、アイさんは乗り気じゃないみたいで、校外の監視は殆どがコズエさんとカオルになりそうだ。というか、カオルがそうがいいって言って聞かなかったんだけど。
まあコズエさんは他にも仕事をもらっているようだし、オレと組むこともあったけど、アイさんが監視に加わることは殆どなかった。
『まあぼくがこの中でしたら一番悪役っぽいですし、彼女に敵視してもらえればしばらくはいいと思いますけどねえ』
『あんまり酷いことしないでね、カオル』
『わかってますよ~』
『レンは? どうするの?』
『策は考えてます。安心してください』
それから、体育祭の打ち合わせの際に必要だと九条が言っていた資料を、理事長にお願いをして鍵を貸してもらって奪った。……少し。ほんの少し困ればいいなと。それぐらいの気持ちだったのに。
『……っ、なんで複製なんか……』
無くした資料を、時間に間に合わそうと必死に複製をしていた。
『はあ。はあ……』
『(……なんで。こんな、つもりじゃ……っ)』
無理をし過ぎた彼女は倒れてしまい、それを九条が運んでいく姿を、苦虫を噛み潰したような顔で見つめていた。
『……報告。します』
彼女が無理をしたことで時間が削られたこと。その証拠に、打ち合わせ時に使う資料を提出した。
『あら。できるじゃない。この調子で頼むわよ?』
『……っ、わかり、ました』
悔しかった。何のために彼女を守ってるのかさえ。……もう、よくわからなくなった。
それからカオルも体育祭当日に彼女に接触をしたみたいだ。これでしばらくは大丈夫だろうけれど……。
『ちょっとカオル。なんであおいさんにキスしたの。ていうか犯しかけてんの』
ほんと、何してくれてんだよ。
『だってえ~。嫌われるには手っ取り早い方法でしょう?』
『だったら、私が消した資料のことを言っただけでも十分だと思いますけど』
『え。れ、レンくん……?』
『そうだよー! レンもこう言ってるのにっ!』
『カオルはやり過ぎな節があります。気をつけてください』
『(そうですかあ。あなたも彼女が好きだと気づいたんですねえ……)』
やれやれと。カオルは一人大きなため息をついたら、“つきたいのはこっちだ”と言わんばかりの形相で二人に睨まれたので、よくよく謝っておいた。
『あ~……』
『ん? どうしたんですかアイさん?』
アイさんが、時々ぼうっとすることが多くなった。
『あおいさんと話したい』
『『え』』
『だって一回も話したことないしっ! 俺。そろそろ限界……』
『(いや、そもそも向こうはあなたのことご存じではないですよお……?)』
『(そんなの。オレだってあの時頑張って起きて会話しておけばよかったって思う。オレだってまともに会話したことないのに……)』
でも、何を思ったのか。カオルが、『アイさんの『願い』を叶えてあげますう』って言い出した。……ほんと、何するつもりですか。
どうやら今度は文化祭に目をつけたみたいで、その時にアイさんを道明寺だということを隠して彼女に接触させようと目論んでいた。
『……すみません。レンくん』
『はい? 何がですか?』
この時からすでに、カオルはオレの気持ちに気づいてたらしい。まあアイさんも、実はそうなんだろうなとは思い始めてたみたいだけど。



