すべてはあの花のために❾


『レンく~ん?』


 そう話した後、これでもかというほど口角を上げたエリカさんが、オレに耳打ちしてくる。


『やーっと気づいてくれたみたいでよかったわ?』

『……だから、何をですか』

『あおいくんに、遠慮してたでしょう』


 ……え。


『あの子を見ているあなた、まるで恋してるみたいだったもの?』


 ……ち。ちょっと待って。


『どうやら家族で縛っても無理そうだから。こう言っておきましょうか』


 ……やめて。やめて、くれっ。


『あの子の時間を削りなさい。さもないと、……かわいい彼女の体に、たくさん傷がつくかもしれないわねえ?』

『――!! ……ッ、違う!』

『え。……れ、レン……?』

『どうしたんですかあ?』

『何が違うのぉ。そんな大きな声出して。そうだと言ってるようなものでしょう?』

『ちがっ。お、……わ。私、は……』


 なんでバレたんだ。隠して。……いたのに……。


『二人とも? きっとレンくんはちゃんとお仕事してくれると思うから、一緒に頑張ってねー?』


 ……そんなの。もう……。


『……レン? 大丈夫?』

『……あい、さん……』


 ……オレは。本当に。……もう……。


『レンくん。気分悪そうです。顔が、真っ青ですよぉ……』

『……か、おる……っ』


 彼女に嫌われることでしか。彼女を守ることなんてできなくて……。……彼女を守るために。彼女を傷つけるとか……。


『……ほんと。……っ。ちゃんちゃらおかしすぎますっ』


 ほんと。おかしくなってしまいそうなほど。彼女が好きで好きでしょうがないというのに。
 もう。ここからなんて逃げられない。もう。……助けてあげることなんて……。


『……っ。できないっ……』

『レン……』

『レンくん……』


 助けなんて求められない世界で。ただ罪に手を汚して彼女を守るしか。オレに、残された道はないのだろうか。