すべてはあの花のために❾


 ――ガバッ!! 


『ええ!? ユッキーどうしたんだよ!』

『いきなり立ち上がってどうしたの? ツッキー?』


 ほんと、どうしたっていうんだろう。
 オレだって。……っ、わからない。 


『ちょっと、お手洗いに行ってくる』

『お、おう。……どうしたんだよ。急に腹でも痛くなったのか?』

『あたし、薬持ってるけど……』

『いや、大丈夫だよ。ありがとう』


 そう言って、隣で未だ爆睡してる奴に彼女が掛けてくれた毛布を掛けてやって、取り敢えず車両と車両の間に身を潜める。


『はあ。……わかった。わかったから……』


 ちょっと落ち着いてくれと、自分の心臓にそう話しかける。


『もうわかったって。……十分だ』


 彼女が触れた、やさしい手が。あったかいけれど、その触れた先が熱を帯びたり。


『……厄介だな、これは……』


 彼女が毛布を掛けてくれた。ちょっとしたやさしさを思い出す度に、とくんと鳴る胸。


『あー……そうか。そう、だよな……』


 彼女の姿が見えるだけであたたかくなる心。見えないだけで寂しい心。


『流石に。これは……』


 いつも目で追っていた。彼女を見るだけで幸せだった。



『そりゃ、大切にもなりますって……』


 そう。それはきっと、あの時の写真を見てからだ。


『とんでもない人を、好きになってしまった……』


 ずるずると、壁にもたれ掛かってへたり込む。


『多分。わかっていたんだ。でも。……無意識に蓋をした』


 わかってた。気づかないよう、蓋をし続けてきたんだ。きっと、もう好きだったアイさんに遠慮して。


『でも、一番の理由は。オレが彼女には絶対に釣り合わない、最低な人間だったからだ……っ』


 こんな。彼女の知らないところでずっと見ていたなんて。最低なことをしようとしてるなんてこと知れたら……。
 オレの存在がバレてるわけではない。もう一人は知ってるけれど、彼女は知らないはずだ。


『こんな気持ち。気づかなければよかった……っ』


 しばらくオレは、そこから動けなかった。