隣の隣の部屋がうるさかった。
「ちょっと、あいつ寝てるんだから静かにしてよ」
そう言ったらみんな静かになったけど、めっちゃ睨まれた。
「あいつは……? 大丈夫なのか……?」
「うん。気持ちよさそうに眠ってる」
「葵の寝顔はかわいかったか」
「え。アキくん?」
「アンタ、変なとこ触ったりしなかったでしょうね」
「え。なんで疑われてるの……」
「ヒナくん抜け駆け!」
「あいつの体調が悪いのに、抜け駆けとかないでしょ」
「あおいチャンの寝顔が見たい!」
「(こくこく!)」
「いやいや、そっとしておいてあげてよ」
そう言うや否や、チカ以外のみんながあいつの部屋を探しに行こうとする。
「はあ。……チカも手伝って」
「はあ。……そうみたいだな」
二人して、取り敢えずはもうバレてもいいから、ハナが眠っている部屋の前に行く。
「あいつの部屋には入れねえ」
「ちゃんと休ませてあげて」
でも、みんなはあいつが無事な姿が見たいのか、なかなか納得してくれなかったけど。
「あんたらさっさと寝んかコラ。明日も出かけるんだぞ。早く寝ないとお肌に悪いだろうが」
キサのドスの効いた声と血走った目のおかげで、ひとまずはそこでみんな一旦引いた。だから布団に入ったんだけど。
「(……もぞもぞ……)」
「……アキくん、どこに行くの」
「あ、葵の寝顔を見に」
「正直なのはいいけどダメ。寝かせてあげるって約束したじゃん」
「よっこらしょ!」
「お、おいアカネ。どこ行くんだよ」
「お手洗い!」
「♪~(こくこく!)」
「いやいや、オウリも。便所行くのになんでルンルンなんだよ。わかってっから。バレてるから」
「……あ。明日の課題しないと……」
「カナ、それは無理あるし明日休み」
「……ちっ」
「目が冴えちゃったから、ちょっと素振りしてくるわ」
「お、だったらオレも付き合うぞ」
「……チッ」
「え。お前もかよ……」
みんながやっぱりハナのところに行こうとしたから、チカと一緒に見張りをすることにした。
「はあ。……じゃ、オレこっちの部屋の前で待機してっから」
「え?」
「お前はあいつの部屋の前な。頼んだぞー」
「それはいいけど……チカはいいの? 見たくないの?」
「は? そりゃ見てえけど、体調悪くて寝てんだからそっとしておいてやるだろ普通」
「だよね。普通はそうだよね」
二人同時に、大きなため息を落とした。
「取り敢えず、一晩中は覚悟しといた方がよさそうだな」
「そうだね。もしかしたら、みんな以外にも邪魔者が来るかもしれないし」
「は?」
「こっちの話。チカが寝そうだったら、庭の池にぶん投げてあげるね」
「それだとあいつ起きるだろうが。せめて輪ゴム飛ばすとかにしろよ」
「えー。まともなこと言われたし」
「え……」
「それじゃ、また朝にね」
「おう。温かくしろよ? 布団持ってけ」
「うん。頭から被っとく」



