すべてはあの花のために❾


『あなたたちにも、本格的に家のために動いてもらうことになったからー』


 呼び出されたオレとアイさん、カオルは、エリカさんからそう告げられた。


『……どういう。ことですか』


 アイさんが、握り拳を作りながらエリカさんにそう尋ねた。


『どういうって、……そんなこともわからないの? ほんと使えない』

『――……っ』

『本格的というのは、どういうことをすればいいんですかあ?』


 アイさんを庇って、カオルが前に立ってそう聞く。


『そうね。順を追って説明するわ?』


 そう言ってエリカさんがオレらに話したのは、彼女の真実と、オレらがやるべきこと。


『……そ、んな……』

『それは、本当なんですかあ?』

『ええそうよ? だって、『二人』がそう言っていたんだもの』


 ここで知ったんだ。彼女が二重人格だということも。そのもう一つの人格に、いずれ体を奪われてしまうことも。彼女が自分を育ててくれた人たちを、人質に取られていることも。
 本当の両親に気味悪がられて、……捨てられてしまったことも。


『あたしたちが欲しいのは、使える道具。一人はちゃんと使えるんだけどお、もう一人の方は使えない。道具としてはね? だから、駒としては使うつもり』


 オレが会ったのはその、エリカさんの言う使える方。オレが写真で見たのは、使えない。ただの駒として桜へと入学させられる方。彼女がそこを卒業をしなければならない理由も聞いた。


『でも残念なことにぃ、あの使えない方の子がぐずっちゃって、中学は無理みたいなのよねー』


 そんなの、あんなことをしたお前らの自業自得じゃないか。


『だからレンくん。あなたの監視は、高等部でしてもらうわ?』

『――!!』

『え。れ、レン……?』

『レンくんはそんなことをしていたんですねえ』


 二人にだって、言っていなかった。こんなこと、知られたく、なかったから。


『……っ、わかりました』


 でも、それを拒否する権利は、オレにはない。


『物分かりがよくて助かるわ。それから、カオルくんとあおいくん。二人には今もしてもらってるけどお、中・高も百合を好成績で卒業してもらう。首席次席を取りなさい? 必ずよお?』


 それもどうやら、百合にも桜のようなシステムがあるらしい。それを利用するみたいだけど、もう二人の成績はきっと、何もしなくても好成績だろう。だって百合も、こちら側の人間たちが動かしているらしいから。


『それから、三人でして欲しいことがあるのお』


 そうして突き付けられた仕事は、桜を飲み込むこと。そして、彼女の時間を削ることだった。


『そんなことしなくても! 彼女は名前を呼ばれないままなら20歳までしか生きられない!』

『かれこれあと七年くらいじゃないですかあ。それも待てないんですかあ?』

『だって、あんな子いらないもの。時は金なりと言うし、待っている分だけお金がなくなってしまうかも知れないでしょう?』

『(……っ、ふざけてる)』


 桜を飲み込む理由は、きっと運搬に利用するためだ。
 でも。ただでさえ、誰も彼女の名前を探せない状況だ。それに追い打ちをかけるように、今度は削れだなんて……。


『削るのは保険よ』

『はいぃ? どういうことですぅ?』

『彼女の名前を呼ばれる前に、本当の名前を消す予定だもの』

『……!! それはっ……』

『その候補として、今皇家の次男、秋蘭くんがほぼ確定しているわ? 彼が18になる日に、あの子も消える予定よ』

『……じゃあ、削らなくていいじゃないですか』

『だから、言ったでしょう。保険だと。まあ無理してさっさと消えちゃえば? こっちとしても楽でいいんだけど。……なかなか無理なんてしてくれないのよねーあの子』

『……っ』

『一応ここから逃げ出してしまわないようにはしているけれど、その消える日に逃げ出されたらたまったものじゃないもの。期待してるわ? あなたたちの働きに』


 もう、言葉なんて出なかった。そんなこと、したくなんてなかった。