すべてはあの花のために❾


 それから、学校の帰りには必ずここへ来て、彼女のことを知るようにした。


『あれ? 知らない子……』

『え』

『あら~? ほんとですねえ~』


 そんなことを繰り返すうちに、ここで知り合ったのが、アイさんとカオルだった。
 二人もどうやら彼女のことは少し知ってるみたいだった。でも二人とも、どこか苦しそうな表情をしてることがあって、オレと一緒なのかなって思った。
 ……でも、それはオレもだったみたいだ。二人も気がついてた。でも、そのことについて話すことなんてお互いしたくなくて。ただ一緒に時を過ごすうち、仲良くなった。


『かわいいよねーあおいさん』

『そうですかあ~? ぼくは大人な女性が好みですう』

『……はあ』


 でもたまにアイさんが彼女のそういう話をすることがあって、その話をし出したらもう止まらない。


『ええー!? カオルの目は節穴なの!?』

『好みは人それぞれですう』

『うそうそ! ……レンは? レンはかわいいって思うよね?』

『え。わ、私ですか……?』


 そんな、キラキラした目で見てこられても。なんて答えたらいいのか……。


『……かわいいというよりは、お綺麗だなと思いますけど』

『『…………』』

『え。だ、ダメでしたか……?』


 結構正直に言ったつもりだったんだけど。


『……ねえカオル。今のどう思う?』

『そうですねえ。本人は気づいていませんが、どこか惹かれているのは確かな発言だったと思いますう』

『……?』


 何やらコソコソ話をしていた。


『……っ、レンだめだよ!』

『え。そ、そうでしたか。すみません……』


 なんで素直に答えたのに否定されないといけなかったのか。考えだって、人それぞれじゃないか。

 それから、彼女の名前が葵だということを知ったり、専属の執事がいることを知ったけれど……。


『(しんどそうだな……)』


 こういうことで知るのは気が引けたが、方法がないのならそうするしかない。でも、画面の向こうの彼女は、いつもどこかつらそうだった。


『(あまり部屋から出てこないからわからない……)』


 流石に部屋には付いてないので、今何をしてるのかわからないけれど。


『(目が、真っ赤だ……)』


 部屋から出てきた時の彼女は、目を擦りあげたのか真っ赤な時が殆ど。
 それでも執事の……確かシントさんといったか。彼といる時は、まだどこかつらそうでも、時々は笑えていて。

 それが、かわいらしいと思った。


『(かわいい、か……)』


 アイさんの言ってることも、間違いじゃないかもしれない。

 それから、本当に彼女の頭がいいことや、運動神経がいいこと。異常だということも知った。


『(でも、それをいいようにここに使われてしまってるとしか考えられない)』


 どうやら彼女は、道明寺とは無関係の子どもで。どこからか引き取ってきたらしいが、それがどこなのかは、子どものオレにはわからなかった。……でもまだ、この時はよかった。
 月日が流れ。オレが小6に、二人が中1へ上がった時。最悪な歯車が動き出す――――。