『こいつを庇うことなど、お前はできんぞ』

『……庇うことさえ、させてはくれないのでしょう』

『いいや違う。お前は絶対にこいつを庇おうとは思わない。進んで監視をするだろう』

『……こんな、少女に酷いことをしていて。庇いたいと。なんとかしてやりたいと。思わないわけがない』

『…………』

『なんでこんなことを私がしなければならないんですか! 親しい人間など、つくって当たり前でしょう!? 何故。……そんなことをする必要があるんですか!』

『……親しくなれば。こいつのことを知れば、その相手が傷つくからだ』

『何を……』

『必ず傷つくだろう。そして、知れば離れていくだろう。そうして一番傷つくのはこいつだ』

『……どういう。ことですか』

『こいつはな、悪魔の子なんだ』

『(……何を、言っているんだ)』


 こんな、綺麗な少女の、どこが悪魔だというんだ。余程、目の前のお前の方が悪魔だ。……本当に、こんなにも目が奪われてしまいそうなほど美しいのに。


『こいつに関わった全ての人が、食われる』

『……意味が、わかりません』

『それじゃあ言おう。こいつの手は、大きなたくさんの罪で汚れている』

『……どこが、汚れていると言うんですか』


 彼女のどこが汚れている。そんなの、この写真からは――――。


『それは綺麗なままだろうな。自分の手は直接汚さないのだから』

『……なに、を……』

『道明寺にあのようなことをさせてまで大きくし、邪魔な奴らを蹴散らすように言ってきたのは『こいつ』だということだ』

『……冗談を』

『ちなみにだが、お前をこのような立場に陥れたのもこいつだ。柊を倒産に追い込んだのは、本を正せばこいつ。お前をこんなつらい立場に追い込んだのもこいつだ』

『……こんな少女に、何ができると』

『……そうだな。実際に見てみるのがいいだろう。付いてきなさい。きっと今は、きちんと仕事をしているだろうからな』

『仕事……?』


 そうしてオレが連れて行かれたのは、彼女が『仕事』をしている部屋だった。


『捗っているか』

『………………』

『(この子は……)』


 本当に写真の少女か……? 雰囲気が違うし、それに……。


『なんだ。出られる時にきちんと仕事をしろ』

『わかってます』

『(鋭い雰囲気に、赤い瞳。……別人か?)』

『そうだ。お前には紹介しておこう。学校に通い出したら、もう一人のことを監視してもらう、名前は……』

『……蓮、です』

『そうだそうだ。月雪蓮という。お前の一つ下にはなるがな』

『あっそ』

『(どういうことだ。もう一人って……)』

『こいつが、お前のことを知りたいそうだ。今までしてきたことを教えてやりなさい』

『……まずは、五十嵐。それから氷川、朝倉、二宮、柊、桜庭、桐生、九条、皇を壊した。まあ、壊しきれてないところもあるけど、あれだけ崩れれば十分』

『(……嘘、だろ……)』

『なあ言っただろう。そうだ、今何をしているのか教えてあげなさい』

『……今は、薬の運搬方法、経路を考え中。それに、海棠を使う』

『……!? か、海棠って……』

『まあそういうことだ。今の話を聞いてもわからないだろうが、見ていればこいつの異常さがわかるだろう。そのうちな』

『……もういいでしょ。邪魔だから出て行ってよ』

『おおすまんすまん。それじゃあ、よろしく頼んだぞ?』

『(……この少女は、一体……)』