「ただいま」

「はるちゃんっ」

「うん。今日も遅くなってごめんね」

「あはは!」


 準備が忙しくなってきたら、もちろん帰るのも遅くなる。


「ご飯今から作るからね」

「おいしいの」

「が、頑張るよ……」


 帰ってご飯を作って、母さんを寝かせてからやっと自分の時間。


「最近は落ち着いてるけど……」


 もうすぐまた、年が明ける。


「今日も、アオイから連絡は無いのかな……」


 あれから連絡が無いから、聞こうにも聞けない。


「一体、あの家で何が……」


 掛けようにも、あいつが出たら困るし……。


「いっそ、あの蝶ネクタイ使って掛けるか……」


 オレも、掛けたくなったら掛けるってあいつにも言ってるわけだし。


「……はあ。無理無理」


 あいつだったらまたおかしくなる。……ほんと、ダメだオレ。


「そういえば、今日あいつポスター持ってた……」


 どんなポスター作ったのか、オレらは作業離れたところでしてたから見られてないや。


「……明日、早く学校行こっかな」


 見に行こう。うん、そうしようっ。

 今日もアオイから電話が掛かってくる様子はなかったけれど、オレがやっと寝られたのは4時を回ってからで。……二時間くらいしか、寝られなかった。


「行ってくるね、母さん」


 まだ母さんはぐっすり眠っていた。置き手紙をして、オレは朝早くに、きっと誰も登校していないだろう学校へ向かった。


「(……こんな早くに登校してるとか、マジ優等生)」


 多分校内の掲示板に貼ってるんだろうから、それを見に――――。


「……え」


 見に、来たら。


「……ボロボロ、じゃん……」


 何でだ? 確かに、言動行動おかしい時もあるけど、あいつは自分で作ったものをわざわざこんな風にはしない。


「……っ、レンか……!」


 ポスターの横には、あの赤い封筒が貼り付けられていた。……まだ朝早い。きっと、他の場所の掲示板も同じようになってるはずだ。
 寝不足の体を必死に動かし、オレはレンを捜しに校内を走り回った。