「……ん……」

「……あ。起こした?」


 ゆっくり運んでいたんだけど、抱えているハナから小さな声が聞こえた。


「……。ひ。なた……」

「(……ハナかな。アオイかな)」

「……あったかい……」

「ん?」


 こてんと、オレの方に頭を預けてくる。


「あんたの体温が今低いからだよ」

「……そ、か」

「寝惚けてる?」

「ん……」

「(いや、寝惚けてるの返事にうんって……)」

「……。はあ。……っ」

「ん?」


 どこか、少し涙声のため息が、小さく聞こえた。


「……何。泣いてるの」

「ううん。……また、迷惑掛けたって」

「こんなの迷惑の内に入らないし」

「え……?」


 用意してもらった部屋の戸を開け、温かくしておいた布団に寝かせてやる。


「だから、もっと心配させてよ」

「……はは。らしく、ないね」


 ふわり布団を掛けてやったら、温かいのか少し頬が緩む。でも、話してる時も思ったけど、やっぱり寝惚けてるみたいだった。


「オレはしないよ、そんなこと。みんなが心配だって言ってる」

「……そ、か」

「でも、もっといろんなこと話して欲しいって思ってるよ、みんな」

「え……」

「これもだけど、自分たちをもっと頼って欲しいって。そう思ってるから」

「……。ひなた、くんも……?」


 そう聞いて、ああハナなんだなって思った。


「下僕のくせに、ご主人に頼るわけ?」

「…………」

「うん。頼りたかったらおいで」

「……。え」


 ゆっくり頭を撫でてやる。きっともう、覚えられないくらい眠いんだろうから。


「目閉じて。無理しないで、ちゃんと休むんだよ?」

「……。ん。あり、がと……」


 そうするとすぐに、寝息が聞こえてきた。寝付きよすぎでしょ。


「……オレに頼ったって何も、ハナに励ます言葉なんてかけてやれないよ?」


 それでも、いいなら。


「いつでもおいで。また、泣かせちゃかもしれないけど」


 とんとんと。頭をもう一度撫でてから、彼女の寝顔をもう一度見て部屋を出た。