「(そっか。あいつが仮面を着けてるのは……)」
きっと、必要以上に仲良くならないためだ。オレみたいな奴が、出てしまわないように
そういえば言ってたっけ。あの、……夜の花畑で。
「(守ってるんだ。仮面で。オレらのことを)」
だからあいつは、友達は作っちゃいけなかった。作りたいけど、作ってしまったら……。
だから、人と一定の距離を作るために仮面を着けたのだろう。
「(でも、取ってくれてるってことは……)」
本当に大切なんだ。オレらの前で、仮面なんか着けたくないくらい。大好きなんだ、あいつも。
「(でも、また着けるって言ってた)」
また家が関係してるんだろうけど、ハッキリしたところはわからなかった。
「(沖縄から帰ってきた日から、アオイから連絡が来ない……)」
一体何があったんだろうか。シントさんのことも気になるし。
「……それから。言いにくいですが、家は雇う時からシントさんが皇だということを知っていました」
『……!? そんなはずは。……道明寺は、信人と面識はないはずだ』
「何でかはわかりません。あの事件から推測をしたのかも。面識はなくても『シント』に、もしかしたら引っかかったのかもしれませんし」
『……っ。てことは……』
「あの家は、最初からシントさんを人質に取っている。そういうことになります。だからあなたは、あの家の駒なんですよね」
『……それだけが理由ではないんだけどね』
「……?」
『……そうか。わかったよ。ありがとう日向くん』
「え。……これだけでいいんですか?」
正直言って、もっと聞かれるんじゃないかと思っていた。こんなことで彼が協力してくれるなんて。
『もっと聞いてくるんじゃないかと思った?』
「あ、……はい。そうですね」
『今回は協力だから。ここまでで十分』
「それでももっと情報がいると思ってました」
『あ。そう? じゃあもう一つ』
「(いい加減だなあこの人……)」
『どうして彼女は、家が倒した俺らのことを、わざわざ助け起こしてくれたのかな』
「……そうすることが、あいつにとって必要だからです」
『君が言えないということだけは、十分わかったよ』
「……すみません」
『ううん。大丈夫だよ。君が言えなかったことでも、彼女に聞いていいんでしょう?』
「……そのことですけど、オレのことは絶対に言わないでくださいね」
『じゃあその理由も聞こう』
「……こんなことをしているとバレたら、あいつはもう、誰にも話さなくなる。助けられなくなるんです」
『そうか。それは不味いね。だったら伏せていれば、聞いても問題ないかな?』
「シランさんが、オレとの接触無しに聞ける範囲でしたら」
『大丈夫だよ。だって彼女、俺のことは知らないでしょう?』
「………………」
『え。知ってるの?』
「まずは、あいつと話してみてください」
『日向くん……』
「きっとシランさんも、オレの駒になると思いますよ」
『……そうなったらきっと、俺も結構知ってることあるから。大いに役に立つと思うよ』
「期待してます。……しっかり、聞いてきてあげてくださいね」
『うん。それじゃあね、日向くん』
「はい。失礼します」
取り敢えず、彼ならきっと引き出してくれるはずだ。
「……シランさんゲット(よしっ)」
まだ決まってないけれど、もう引き返させやしない。
「……まるっと助けてやろうじゃん」
――そう。それはもう、全ての人たちを。



