『警察、が……？』
「はい。警察がバックに付いているんです。あの家は」
『だから、好き放題しているのか』
「警察だけではなく政治家も付いていますけどね」
『金の出所はそこか……』
「他にはありますか？」
『……楓から聞いた。柊の会社を潰したのも、本当にそいつらなのかい？』
「カエデさん口軽いですね……」
『楓は、『調べてわかった』と言っていたよ。日向くんからとは聞いていない』
「（墓穴を掘ったのはオレか……）オレも、人から聞いたので自信を持って『そうです』とは言えないですけど。ほぼ確実な情報源から聞いたので、恐らくそうだと思います」
『……それじゃあ、どうして信人があそこに行ったか。教えてくれるかな』
「逆に聞きますけど、知らないんですか？」
『秋蘭とは連絡取ってるみたいだけどね。……俺には全然連絡くれないんだよ』
「……アキくんからは、何も……？」
『聞いたのは聞いたよ。信人が生きていることを、一番最初に教えてくれたからね』
「…………」
『俺みたいになるのを恐れてここから逃げ出して、彼女に拾われた。秋蘭や俺、楓に嫌われてると思って、会わなかったんだってことも』
「それだけ知ってたら十分じゃ……」
『俺が知りたいのは、どうして彼女が信人を拾ったのかだ。執事なんていくらでも雇えばいいし、どうしてわざわざ、どこの誰かもわからない奴を、彼女は選んだのかと思ってね。和解と言ったらちょっと語弊があるけど、信人も、秋蘭と楓とちゃんと話してくれたみたいだし、帰ってきたらいいと思うんだけど』
「………………」
『どうして彼女は、信人を拾って執事にしたのか。どうして信人は、あそこから出てこないのか。それを知っていたら、教えてくれるかな』
「……そう聞くってことは、ある程度予想がついているんじゃないですか」
『あくまで予想だ。俺が欲しいのは確証だよ、日向くん』
「……オレも、すべてを知ってるわけではないですし、これも人から聞いたので間違ってるかもしれませんけど」
まあアオイから聞いたんだから、間違っていないとは思うけど。
「あいつが信人さんを拾ったのは、……寂しかったからです」
『寂しかった？』
「……昔、仲が良かった子が一人だけいたんです。でも、その子とはある日を境に会えなくなった」
『…………』
「あの家にいることが苦しかった。唯一の心の支えが、その子でした」
『…………』
「けれど、仲良くなったせいで、家に目をつけられてしまった」
『――!! ……ま、さか』
「寂しかったんです。それから、苦しくて苦しくてしょうがなかった。そんな時に出会ったのが、シントさんでした」
『……そうか』
「家に帰りたくないと言ったシントさんに、自分を重ねたんです。それなら助けてあげたいって。そう思ったらしいです。でも、仲良くなったらその子みたいにシントさんまで消されてしまうかもしれない」
『……！』
「でも、そばに誰かがいて欲しかった。じゃないと、あの家にいることが堪えられなかったんです」
『あの子は、あそこから出られなかったのかい……？』
「……出られないんです。それは今も。だから、シントさんをそばに置くため、執事になることを提案した。あいつは、家に帰れないシントさんを助けてあげました」
『……。そうか』
「でも、本当に助けてもらったのはあいつの方なんですよ、シランさん」
『え？』
「あの家から出られないのは変わらない。それでも、シントさんがいたからまた、笑えるようになったんです」
『…………』
「それにシントさんは、ちゃんとあいつのことをわかってやったから……」
『……？』
「シントさんが、どうしてまだあそこに残っているのか。それは、オレと同じ目的だからです」
『……信人も、あの子を助けたいと？』
「はい。だからあそこで、情報を探しているんだと思います。それからシントさんも、あいつのそばにいたいと思っているんだと」
『……そうか』
これが、アオイから聞いた情報だ。『本人』から聞いたのだから、間違いは無いだろう。
