それから、みんなにパシられて、お土産を買ってたんだけど……。
「(店の中の方が涼しいのに、何してんの)」
店先のベンチで、空を見上げていた。その横顔が、どこか気分が悪そうだった。
「……ったく」
――ガコンッ。自販機で飲み物を買ってオウリに渡す。
「オウリ終わったんでしょ? 買い物」
「え? ひーくんもでしょ?」
「オレはまだもうちょっと。チカのやってて自分の買えてないから」
「いやいや、紙袋持ってるじゃん……」
「そんなことよりも、あいつまたあんなとこにいるんだ」
「え?」
オウリに、店先に座ってるあいつを教えてやる。
「……うーん。どうしたんだろう、あーちゃん」
「またちょっとさ、体調悪そうな気がするんだよね」
「え? そ、そう……?」
「うん。……だからこれ。脱水かもしれないし、渡してきて」
「…………」
「あ。ごめんパシって。オレまだあるからさ、オウリしかいないんだよね。ツバサはアキくんとカナの分で忙しそう」
「ひーくんってさ、なんなの」
「え」
……な、なんか。聞いたことないくらい低い声が聞こえたんだけど。
「さっきだってさ、あーちゃんしんどそうなのわかってたじゃん。なんでひーくんが行ってあげないの」
「…………」
「これだって。ひーくん終わってるじゃん買い物。なのに嘘ばっかり付いておれに頼んでさ。別にいいよ? あーちゃんに近づくチャンスだし」
「オウリ……」
「……イライラする」
また一段と低い声で。そして睨み付けながら。
「……オウリ。オレは」
「ひーくん見てるとイライラするんだって! あーちゃん好きなのに! 気づいてあげてるのにいっつも人に頼んでる! 自分からは行ってあげない!」
そうやって、苛立ちを言葉にしてオレにぶつけてくる。
でも、言い返すことなんてできやしない。だって、その通りだから。
「はあ。イライラするけど、あーちゃんは心配だから行ってくる」
「……うん。ありがとう」
「言っとくけど、たとえあーちゃんが今のひーくんのことを好きになったって、おれは絶対に認めないから」
「大丈夫だよ。ならないから」
「え? ひ、ひーくん……?」
被せるように。ハッキリとそう言うオレに、オウリが少したじろぐ。
「ならないよ。あいつがオレのこと、好きになるなんて」
「え。……ちょ、ちょっと。お、怒った?」
「いや。イライラさせて悪かったって思ってる。でも、これがオレのやり方なんだ。オウリのこと、みんなのこと、使って悪いなって思ってるけど」
「……ほ、ほんとかな……」
「でも、あいつがオレのこと好きになることはないよ」
「ひーく」
「それじゃオウリ、頼むね」
そう言ってオレは店内の商品を、何の目的もないのに見て回った。
「あ、ありがとう。オウリくん」
ヒナタから持たされたはちみつレモンを、葵に渡したオウリはというと。
「いいえー。ドウイタシマシテー(ひーくん。ほんと、何考えてんだか……)」
好きすぎて。大事すぎて。近づけないのか。自分からは近づかないのに、彼の視界には葵しか入らないんじゃないかと思うくらい、誰よりも気がつくのが早いし。……ほんと、不器用だし。
「(あー。イライラする……)」
好きならアタックすればいいのに。
……でも、どこかでわかってたんだ。
多分、彼女なら。きっと。……彼を選ぶだろうってさ。



